最後に紹介したいのは、『たぶん世界一おもしろい理科 物理・化学』(Gakken)です。
理科は、本来、日常生活と非常に近い教科です。
氷はなぜ水に浮くのか。水に沈むものと浮くものがあるのはなぜか。スマホの電池はどうやって電気をためているのか。料理をすると食材の色や硬さが変わるのはなぜか。
ところが、学校の授業では、それが「密度」「イオン」「酸化」「電流」といった用語に置き換わります。そして用語だけを丸暗記しているうちに、もともと面白かったはずの現象が、難しいテスト範囲に見えてしまうのです。
本書では、中学レベルの物理・化学の基本を、全編マンガで解説しています。1項目はおよそ5分で読める短いストーリーになっており、密度、湿度、電気、イオンなどの内容を気軽に学べるほか、料理、リチウム電池、脱炭素社会といった身近な話題を扱うコラムも収録されています。
理科の楽しさは、「知らない現象に出会うこと」だけではありません。今まで何気なく見ていた現象を、自分の言葉で説明できるようになることです。
たとえば、冷たい飲み物を入れたコップの外側に水滴がついたとき、「コップの中の水が染み出した」と考える子もいます。そこで大人が、すぐに正解を教えるのではなく、「じゃあ、空のコップを冷やしても水滴はつくかな?」と問いかけてみる。
予想して、確かめて、理由を考える。これが理科です。
保護者が科学に詳しい必要はありません。わからなければ、子どもと一緒に調べればいいのです。「お母さんも知らない。何でだろうね」と言える家庭のほうが、子どもの好奇心は育ちやすいと思います。
親が「教える人」でなくても、学びは始められる
今回紹介した5冊に共通しているのは、学校の勉強を、教科書の中だけで終わらせていないことです。
英語からは、言葉の背景にあるものの見方がわかります。国語からは、自分と異なる常識を理解する力が身につきます。数学からは、世界を形や数で捉える面白さが見えてきます。社会からは、日常の風景の裏にある文化や歴史を発見できます。理科からは、身の回りの現象を説明する方法を学べます。
子どもに勉強の楽しさを伝えるとき、大人が完璧な先生になる必要はありません。
すべての質問に答えられなくてもいいですし、難しい問題を解けなくても構いません。
むしろ、「そんなこと考えたことがなかった」「一緒に調べてみよう」「この本にはこう書いてあるけど、どう思う?」と言えることのほうが大切です。
子どもが勉強を嫌いになる家庭では、勉強についての会話が、「宿題は終わったの?」「何点だったの?」「次はもっと頑張りなさい」だけになっていることがあります。それでは、勉強は評価されるための作業になってしまいます。
反対に、普段の食卓や旅行中の会話で、「英語ではどう言うんだろう」「この形は数学的に面白いね」「この食べ物は、なぜこの地域に多いんだろう」と話している家庭では、勉強は世界を理解するための道具になります。
子どもに「勉強しなさい」と言う前に、まず大人が1冊読んでみる。そして、そこで知った面白い話を、子どもに1つだけ話してみる。
その小さな会話が、子どもにとって、教科書の外にある学びの入り口になるのだと思います。



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