本当に難しいのは、そのさらに前です。そもそも「頑張りたい」と思えない。自分の人生が変わるとは到底思えない。勉強する意味を実感できたことが一度もない。そういう子どもに対しては、はっきり言ってまだまだ支援が足りていないのだと思います。
ヤングケアラー&生活保護から東大トップになった彼
こう書くと、「そこまで丁寧に支援したところで、費用対効果が悪いのでは」と感じる方もいるかもしれません。その気持ちも、わからなくはありません。
しかし、ヤングケアラー・生活保護世帯から現役で東大に合格し、しかも法学部を最優秀成績で卒業するに至った青年がいるということは、ここでみなさんには知っておいてもらいたいです。
それが、冒頭でも言及した、清野孝弥さんです。彼は、両親の病気の介護を担うヤングケアラーで、生活保護世帯で育った方です。塾にも予備校にも通わず、公立高校から独学で東大文科一類に現役合格し、東京大学法学部を最優秀成績で卒業。現在は東大法科大学院に在学しています。
もちろんこれは、n=1の話です。誰もが清野さんのようになれるわけではない。
それでも僕は思うのです。清野さんは「頑張りたい」と思えるところまで自力でたどり着いた稀有な例ですが、その手前で立ち止まったまま「自分にはどうせ無理だ」と思い続けている子どもたちの中にも、社会を動かす力を持った人が確実にいるはずだ、と。
制度がここまで整った令和の日本で、いま埋もれかけているのは、お金の問題ではなく「才能と可能性そのもの」なのかもしれません。
必要なのは、「やりたい人にお金を渡す」だけではなく、子どもが「自分もやってみたい」と思えるところまで一緒に歩いてくれる大人を増やすことではないでしょうか。
令和になって、教育を受けるための入り口は確かに広がりました。次に問われているのは、その入り口の前で立ち止まっている子どもを、誰が迎えに行くのか。教育格差の本当の難しさは、きっとそこにあると僕は思います。


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