その一つは「生理落下」だ。オリーブの木があまりにも水分が足りず、このままでは自分(木)が枯れてしまうと判断すると、自衛本能として自ら実を落とし、水分の消費を減らそうとする現象だという。秋から冬にかけて収穫するはずのオリーブの実が、熟すのを待たず青いまま落ちてしまい、収穫量が激減する。また春から初夏にかけての受粉の時期に猛暑が襲えば、花粉が乾燥してしまって受粉ができない、受粉しても花の段階で焼けこげてしまうなどの被害も起きている。
世界最大のオリーブオイル生産国であるイタリア、そしてスペインで酷暑による大減産が起き、市場価格はすでに高騰している。日本の人にとってみれば、オリーブオイルはたまに作るイタリア料理の材料の一つかもしれないが、イタリア人にとっては毎日の食事に絶対に欠かせないもの。日本人の醤油のような存在だから、価格の高騰は家計に大打撃を与え始めている。
世界遺産最多の観光大国にも暗い影
ローマのコロッセオやナポリ近郊のポンペイ遺跡など人気の観光地は、日陰が少ない屋外観光地であるため、観光客が体調を崩すことも増えているという。救護処置室の拡充や、ナイトツアーへの変更を余儀なくされている。一方で、夏のバカンスの目的地が、イタリア国内ならこの冬に冬季オリンピックが開催されたドロミテ渓谷、欧州全体で言うならデンマークやスウェーデンといった北欧に人気がシフトしているという。
確かに私も先日、北イタリアの某歴史的都市に行ったのだが、その日はなんと39度で、とてもじゃないが観光なんてしてられない、今後はもう夏の都市観光はやめようと思ったのだった。地球温暖化による酷暑は、観光業にも暗い影を落としている。
くしくもこの原稿を書いている今、トリノでは久しぶりの大雨が降り、気温がグッと下がった。ああ、やっと終わるのか? と予報サイトを見てみると、8月下旬にかけてまた40度以上に達する厳しい暑さが戻ってくるという。欧州では猛暑はもはや、単なる「不快な気候」ではなく、たくさんの命を奪い、経済にも大きな打撃を与える経済と公衆衛生の大きな脅威となっている。


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