この企業といえば、もっぱら現CEOのサム・アルトマンが連想されがちだが、そもそもこの企業は彼が個人で立ち上げたわけではない。
実は彼と「もう一人の起業家」の強い連携によって設立されたことをご存じだろうか。
スペースXやテスラといった大企業を率い、現在世界で最も豊かな人物とされる男だ。
それは"超知能による人類滅亡"への恐怖だった――。
イーロン・マスクは以前からAIについて深い懸念を抱いていた。
その懸念はChatGPTが登場するはるか前、2010年代前半にさかのぼる。
監視のために500万ドルを投資
2012年、マスクはロンドンにあるAIラボ、ディープマインド・テクノロジーズのCEOで学者然としたデミス・ハサビスに出会った。
その後まもなく、ハサビスもマスクのスペースX工場を訪れた。
巨大なロケット部品が運搬されたり組み立てられたりする騒音のなかで食堂に座り、ハサビスはマスクに、人間の知性を超えるであろう高度なAIが人類に脅威をもたらす恐れがあると指摘した。
さらに、植民地化した火星に逃げるというマスクの安全策は、このシナリオでは機能しないだろうとも述べた。
ハサビスはあくまで冗談として、超知能が人類を銀河系の果てまでも追いかけてくると語った。
しかしマスクにはそれが冗談とは思えず、ディープマインドを監視するために同社に500万ドルを投資した。
のちの2013年、ナパバレーのワイン生産地で開いた誕生日パーティにおいて、マスクは長年の友人であるグーグル共同創業者のラリー・ペイジを相手に、人間の知性を超えるAIは本当に問題になるのかどうか、白熱した議論を交わした。
ペイジは問題になるとは考えず、AIを次の進化段階と呼んだ。
ためらうマスクのことを、「種差別主義者」と呼び、人間でない種族を差別していると非難した。
これをきっかけに、マスクはAIの存在が引き起こすリスクについて絶え間なく主張するようになった。
MITのシンポジウムでは、AIをおそらく人類の「存在を脅かす最大の脅威」であり、その開発は「悪魔を召喚するような行為」だと表現した。
ニューヨークの出版社と話し、それからはAIをはじめとした人類絶滅レベルの脅威について本を書くという考えに夢中になった。


