2013年後半、グーグルがディープマインドを買収すると知ったマスクは、これは非常に悪い結果を招くと確信した。
マスクは公の場で、もしグーグルが今後生まれてくるであろうAGIに利益を最大化する指示を出せば、そのソフトウェアはいかなる犠牲を払ってでもグーグルのライバルを排除しようとするだろうと警告した。
「最初にやることがライバルAI研究者の皆殺しだとしたら、AIとしていささか問題のある性質だ」とマスクは『ザ・ニューヨーカー』に語っている。
ロサンゼルスでハウスパーティが開かれた際、彼は上階の小部屋にこもり、1時間にわたるスカイプ通話を通じて、ハサビスにグーグルとの取引を考え直すよう説得した。
「AIの未来はラリーにコントロールさせるべきではない」と。
全力でハサビスのビジョンに対抗する
マスクはグーグルへの対抗策を模索するため、みずからディナー会を開くようになった。
2015年初頭には、アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマに会い、AIの危険性、安全にする方法、規制法などについて説明した。
同じころ、マスクはスペースXでハサビスと再会した。
グーグル・ディープマインドAI倫理委員会の最初の会議が開かれたからだ。この委員会は、ディープマインド技術の責任ある開発を監督するためにペイジとハサビスが発足させたガバナンス構造だ。
この会議がマスクに、委員会はまやかしであるという確信を与え、ハサビスのビジョンに対抗することに全力を尽くすという執念に火をつけた。
その後何年も、マスクはことあるごとにハサビスを悪と呼び、阻止しなければならない相手と言いつづけた。そして、ディープマインドは悪、オープンAIは善という立場を鮮明にしていった。
2016年、オープンAIが設立されてまもなく、数人の従業員がハサビスと会い、オープンAI上層部にこう報告した。
ディープマインドは実際に世界を征服するつもりであり、マスクの見立ては正しかった、と。

