そして、安いだけでなく機能をこれでもかと搭載しているのも、ゼブラ流。例えば、その代表格がジェルインクボールペンとして、2003年に発売したサラサクリップである。もともと2000年に発売していた「サラサ」に、可動式のクリップを採用して売り出した商品だ。
100円ショップにも普通に売っている安価なボールペンのスタンダード的な商品だが、数多くの工夫が詰まっている。
「サラサクリップの代名詞である可動式のクリップは、開発当時に特許を取得しました。あとはグリップにも工夫していて。従来のボールペンはグリップが外れるものがほとんどだったんです。サラサクリップでは、ペン先と一体成型していて外れません。すると、使い込んでもグリップが膨張したりしにくいんです」
ボールペンを製造する中で、コストがかさむのは組み立てる工賃だ。特に商品名にもある、肝いりだったクリップは当初「かなりコストがかさむので、社内では『ちょっと無理かも』と言われていた」と中田さんは振り返る。
それでも、これまでいくつもの「日本初」となる技術や機能を生み出してきた自負と、消費者の使いやすさを考えると、無理をしてでも発売する価値があると判断した。その結果、当初はコストが見合わない状態での販売だったというサラサクリップは、10年ほどの期間を経て2012年にジェルボールペンとして売り上げ1位の商品に。以降、14年連続でその座を守り続けている。※
※日経POSサービス 2012年1月~2025年12月文具市場(ジェルボールペン)各年間累計販売本数より。全国GMS/SM/CVS/DRG計
「何となく使う」→「指名買い」へとニーズが変化
独自の技術を商品に落とし込み、手ごろな価格で販売してきたゼブラだが、近年は少しずつ市場環境が変化してきた。
転機の一つは、言うまでもなく「コロナ禍」である。
リモートワーク自体は2020年以前から少しずつ広がっていったが、コロナ禍を機にかなりの勢いで浸透を見せた。リモートワークをするには、当然だがこれまでオフラインで行っていた業務をデジタルに置き換える必要がある。その結果、ペーパーレスが進んだ。2010年代は4000億円規模だった国内文具・事務用品市場は、2020年代になって3900億円ほどで横ばいとなっている(矢野経済研究所の調査結果を参照)。
伸び悩む市場で、シェアの奪い合いも激化中だ。
やや古い話になるが、リーマンショックごろを境に、それまで文具を支給していた企業が、経費を削減するために支給しなくなるケースが出てきた。以前は何となく支給されるものを使っていたビジネスパーソンたちが、以降は自分で選んで購入するようになっていく。
せっかく自分で買うのなら、機能だけでなくデザイン性などを含めて検討するのは当たり前の話だ。さらに、近年は文具系YouTuberたちも増えてきた。こうした結果、安さだけではなく「より良いもの」を、指名買いする消費者が増えてきた。


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