もうひとつの方法は「DNAメチル化時計」(以下、メチル化時計)と呼ばれるもので、2013年にふたつの研究グループからほぼ同時に報告され、以後、研究が大きく進展している。まずは、その原理を説明しよう。
エピジェネティクスという研究分野がある。聞き慣れないかもしれないが、近年、爆発的に研究が進んだ分野で、現役時代は専門分野にしており、憚りながら『エピジェネティクス 新しい生命像をえがく』(岩波新書)を上梓している。
詳しく知りたい方にはそれをお読みいただくとして、ここでは、エピジェネティクスにおける重要な分子メカニズムにDNAメチル化という現象があることだけを頭にいれてほしい。
「メチル化時計」は2歳程度の誤差で年齢を推定
DNAは、A(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)という4つの塩基がずらずらっと並んだ分子である。人間の場合、ひとつの細胞の中に、AとT、GとCが対(「つい」と読んで、詳しくは「塩基対」といいます)をなして60億個も並んでおり、その並び方がゲノム=全遺伝情報である。
4つの塩基のうちのC、シトシンがメチル化を受ける、すなわち -CH3(メチル基)がくっつくことがある。ゲノムの特定の部位のシトシンがメチル化を受けているかどうかを調べることにより、2歳程度の誤差で年齢を推定できる。それがメチル化時計だ。
最初に出た論文は、大きな驚きを持って迎えられた。と言いたいところだが、大きな懐疑を持って迎えられた。早い話が、多くの人は信じなかったのである。
そもそも、DNAのメチル化が年齢の指標になるなどとは考えられていなかった。それに、ものすごい正確さで推定できるという結果がかえって嘘くさかった。


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