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「これがシェフとしての最後の日」ー病気でキッチンに立てなくなった料理家が流した涙、それでも料理は自己表現そのもの

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(写真:『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ もしもキッチンに立てたなら』より、撮影:繁延あづさ)
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お店でも家でも分量を量らないわたしが、頭の中のイメージを文字にし、家族やヘルパーさんに作ってもらい、わたしが味の最終チェックをする。

そんな新しい「わが家だけの料理の形」が生まれたのです。

それを見つけた瞬間、心が少しだけ軽くなりました。

わたしのお世話をしてくれるリン(左)(写真:『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ もしもキッチンに立てたなら』より、撮影:繁延あづさ)

スマホで綴るレシピと、祈り

レシピはすべてスマホに書き込んでいます。レシピを書くと思い立った当初は指が動き、スイスイと入力できました。

でも、日が経つごとに力が入らなくなり、小さなサプリメントさえつまめなくなった頃、「進行している」とさらに強く実感するようになりました。

指先で画面を押すのが辛く、第二関節で操作します。

ALSになってわかったのですが、手の指って、まっすぐ伸ばすのにも筋力が必要。

身体の筋力がなくなっていくわたしの体は、指が曲がったままになり、伸ばしにくくなりました。

疲れる日は音声入力に切り替えていたのですが、喉と呼吸する筋力が衰えてきてからは声が小さいせいで認識されづらくなってしまい、何度も歯がゆい思いをしました。

悔しさのあまりスマホを投げてしまうことも。

でも、投げたスマホを自分で拾うこともできず、情けない思いをする、の繰り返しです。

それでも、わたしはスマホに向かうことをやめられませんでした。

「このお弁当を作ってあげたい」

「このスイーツを食べさせたい」

そんな思いが、わたしの毎日の原動力でした。指が動かなくなっても、声が出にくくなっても、レシピを書き続けさせてくれるのです。

レシピを考えているときの頭の中は、病気になる前と何ひとつ変わっていませんでした。

『難病ALSのママが綴るいのちのレシピ もしもキッチンに立てたなら』(徳間書店)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

いつの日か、タカラやリンがこのレシピを手に、料理をしてくれる日が来るかもしれない。

そのときにわたしが側にいなくても、味や記憶を思い出しながら、わたしの「母の味」を再現してくれるかもしれない。

夢中で書きためたレシピは、気づけば100を超えていました。

もし病気がよくなったら、積もったレシピたちを見ながら、思いきり料理をしたい。子どもたちと一緒にキッチンに立ちたいです。

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