実際、14年の食用油事件について台湾大学の研究者らは、政府の対応が不十分だったことで事件が長期化し、食品安全と政府に対する市民の信頼が低下したと分析している。
さらに、行政機関の間で情報共有が十分に機能しなかったことや、中央・地方政府の責任分担が不明確だったことも問題として指摘されている。
もっとも14年の食品安全問題だけを国民党敗北の直接的な原因とするのは適切ではない。中国との関係、経済政策、ひまわり学生運動以降の社会情勢、馬英九政権への全般的な不満など、複数の政治的要因が重なった結果と見るべきだろう。
26年11月の地方選挙にどう影響するか
その後16年1月の総統選挙では民進党の蔡英文が勝利し、国民党から民進党への政権交代が実現した。これは08年から続いた国民党政権に終止符を打つ、8年ぶりの政権交代だった。
こうした過去の経緯を踏まえると、26年8月現在のベンゾ[a]ピレン基準超過問題が政治問題化していることも理解しやすい。現在、野党の国民党や民衆党は、公営企業の台糖や衛福部の対応を厳しく追及している。
こうした動きの背景には、食品安全問題を行政の管理責任と結び付け、政府への批判を強めることで、11月の統一地方選挙に向けた政治的な争点にしていくという側面があると考えられる。
実際、26年の今回の事件をめぐっては、野党側が14年の食用油事件を引き合いに出し、当時の民進党が馬英九政権に求めた対応と現在の民進党政権の対応を比較して批判する動きも出ている。食品安全をめぐる問題が、与野党の「過去の発言と現在の対応」を突き合わせる政治的な攻防の材料になっているのである。
もちろん、今回の中聯油脂問題が14年の事件と同じ経過をたどるとは限らない。14年の事件では、廃油の不正転用という明確な違法行為が社会に大きな衝撃を与えたのに対し、今回の問題は原料管理や製造工程、企業の食品安全管理をめぐる不備が中心となっている。この違いは、今後の台湾世論の受け止め方や政治的影響を考えるうえでも重要である。
フェーズが変化しているとはいえ、26年11月28日に予定される統一地方選挙に向け、今回の食品安全問題がどのように争点化され、政府・与党と野党がそれぞれどのような責任論を展開していくのか、今後の動向から目が離せない。


※ログイン後、コメント入力が可能です。