その中で、さまざまな調査を通して実態を調べたところ、高校数学の微分積分の計算は得意であるものの、「割合%」の問題が苦手であったり四則混合計算を間違えたりする学生がいることがわかった。
「2000年に対し2001年は20%成長し、2001年に対し2002年は10%成長したものは、2000年に対し2002年は何%成長したことになるか」(正解32%)や「40-16÷4÷2」(正解38)というような問題だ(ちなみに、この式はネット上でもいろいろ用いたこともあって、筆者の代名詞のようになってしまっている)。
そのような調査結果を踏まえて、「数学は一歩ずつ理解を積み上げていく教科である」という信念をもっている。
理解を大切にしてきた学生は、最後に伸びる
筆者は45年間にわたって大学で講義を行ってきた。5つの大学の専任教員として、また5つの大学の非常勤講師として、述べ1万5千人の学生に対して教鞭を執ったことになる(文系・理系ほぼ半々)。
その経験から言えることは、計算が苦手な者でも理解を大切にしてきた学生は、最後に伸びることである。
一方、「やり方」の暗記だけで高校数学までを乗り越えてきた学生は、大学数学でつまずいてしまうことが多いのである。そのカギは、ずばり「すべて(all)」と「ある(some)」の用法である。
「すべての学生はスマホをもっている」の否定文は「ある学生はスマホをもっていない」であり、「ある学生の身長は200cm以上」の否定文は「すべての学生の身長は200cm未満」である。
高校までの数学を理解して学んできた学生は、これらの用法でつまずかなければ大学数学の微分積分学と線形代数学は簡単に乗り越えられるだろう。
また、覚えていた「やり方」に一致する問題はパッと計算して答えを書くが、その一方で、試行錯誤して考える問題はすぐに諦める者が目立つようになってきたことである。
このような傾向は、クリエイティブに生きることが何より求められる現在においては、芳しくないはずだ。そこで最近は、従来の項目別の学びとは別に「発見的問題解決法」の学びを広く訴えている。これは、人それぞれによって分類は異なるが、筆者としては数学の諸問題を念頭に置いて、以下の13個を考えている。
帰納的な発想を用いる。定義や基礎に戻る。背理法を用いる。条件を使いこなしているか。図を用いて考える。逆向きに考える。一般化して考える。特殊化して考える。類推する。兆候から見通す。効果的な記号を使う。対称性を利用する。見直しの勧め。
それらを見て気づくだろうが、発見的問題解決法は数学の問題を考えるときのヒントを与えるだけでなく、生活やビジネスの問題を考えるときのヒントも与えているだろう。
このような視点からも、数学に興味・関心をもっていただければ幸いに思う。「大学数学で突然つまずく」のではなく、小学校から高校までの積み重ね段階で暗記だけに偏った学びのつけが、大学数学で表面化すると考える。小学校から高校までの算数・数学の学びは、努めて理解重視の創造的な教育から導かれるものであってほしいのである。




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