現行法においても、事業者が個人情報を使用して統計を作成することや、AIモデルを開発して提供すること自体は可能である。事業者が保有するデータを別の事業者に提供しようとすること自体も、不可能ではない。
しかし、原則として本人の同意が必要であり、膨大なデータの中に含まれる個人情報を抜き出して本人から個別の同意を取り付け、同意を得た分のデータだけを提供するという作業が必要になるので、実際にはハードルが高い。
また、AI開発を目的として、ウェブサイトやSNS等をクローリングして膨大なデータを集める場合、その中に病気や犯罪などに関する機微な情報が含まれていると、本人の同意が必要となるケースがある。しかし、この場合も同意が必要な情報だけを抜き出して個別に同意を得ることは困難であるため、クローリングによるデータ収集自体を断念せざるを得なかった。
こうした背景を受け、今回の改正では、成果物として特定の個人が識別できない「統計情報等の作成(AIの学習等を含む)」のみを目的とする場合には、「個人データの第三者提供」「公開されている要配慮個人情報の取得」において、本人同意を不要とする例外が設けられた。
これによって、学習用データを集めやすくなったことから、AIの研究や技術開発には追い風が吹くことが期待される。
「プライバシー侵害」と「個人情報漏洩」の懸念
しかしこの規制緩和策には、プライバシー侵害への懸念の声も上がっている。国会の法案審議の段階でも、野党各党からプライバシー保護が不十分であると指摘された。
個人や消費者側にとっては、AI開発を含めた統計作成等を目的とする場合は同意なく第三者に個人情報が提供されることになり、さらに個人情報の漏洩が発生した際の本人への通知義務が緩和されるので、「無制限に個人情報が取得・提供されるのではないか」「自分が知らないうちにプライバシーに関する情報が広まっていくのではないか」という不安が残るだろう。
実際、自分の個人情報が漏洩するリスクが増大する面があることは、否定できない。例えば、年々増加・深化するサイバー攻撃によって、個人情報の漏洩事案は毎日のように発生しているが、今後は、AI開発事業者がサイバー攻撃に遭い、事業者から提供を受けた個人情報が漏洩する恐れもある。


※ログイン後、コメント入力が可能です。