同じ発想は、公式SNSにも及んでいる。VIVANTの公式アカウントでは、日々、本編の切り抜き動画が投稿されている。
本来であれば、ドラマは「フルで見てこそ楽しめる」コンテンツだ。それを数十秒単位の細切れにするとなれば、抵抗感を覚えるスタッフもいて当然だろう。演者も同様に「前段があっての、この演技」といったプロ意識があるはずだ。
それでも踏み切れるのは、外部から借りた原作ではなく、企画から制作までを自社で抱えているからだろう。権限が一箇所に集まっていれば、判断は速い。原作ものであれば、切り抜きの可否ひとつをとっても、確認と調整に時間がかかる。
実際、第11話のTVer再生数は786万回を記録している。切り抜きで興味を持った層を見逃し配信へ流す動線は、数字の上でも機能しているとみていい。
ただし、権限の集中は速さだけをもたらすわけではない。7月には、週刊誌が福澤克雄監督のパワーハラスメント疑惑を報じ、TBSは「調査でパワハラに該当する言動が認められた」として、人事上の措置を行ったと明らかにしている。決定の速さと風通しの悪さは、しばしば同じ構造から生まれる。
視聴者の感想を番組にし、本編を切り刻んでSNSに流す。かつてなら「作品への冒涜」と言われかねない手法を、TBSは自ら選んでいるのだ。
考察が深まるほど、「いちげんさん」は入れなくなる
この手法には、もう1つ厄介な副作用がある。ファンによる考察が深まれば深まるほど、「いちげんさん」的なライト層は付きにくくなるということだ。
バックグラウンドを楽しむ系のコンテンツは、総じてマニア向けと認識されやすい。最大限に楽しむためには、全話を見ておく必要がある。今はまだ第1シーズンを含め12話だが、最終回直前のタイミングで視聴しようとすると、30時間近くを一気見しなければならない。「話題に乗るだけ」にしては、ちょっとハードルが高すぎる。
そうした「チラ見したい」「考察しないで気楽に見たい」といった視聴者の欲求に、いかに応えていくか。積極的に巻き込むか。もしくは、完全に振り落とすか。そこにVIVANTが「大ヒットドラマ」から「国民的ドラマ」になれるかが、かかっている。
常連が育つ店ほど、初めての客は扉を開けにくい。半年は、それを確かめるには十分な長さだ。
すべての放送が終わった後、VIVANTは「国民的ドラマ」になれているだろうか(写真:TBS『VIVANT』公式Instagramより)


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