「『学習』『科学』の撤退で学んだのは、やめるにも時間とお金がかかるということです。だから判断は早いほうがいい」
前編で取り上げたように、学研は1990年代から約1000億円を投じて新規事業を模索したが、その多くが失敗に終わった。それでも、探索をやめなかった。介護事業が軌道に乗った今も、すでに次の探索を始めている。
実際に、2030年に向けた成長の最重要テーマとして海外展開を軸足に置く。2年間で成長領域へ150億円の投資や海外拠点の拡大を推し進め、国内50%、海外50%の売上比率を目標に据える。
現在も社内公募を通じて新規事業のアイデアを募り続けるほか、若手社員に事業立ち上げを任せる仕組みを維持している。これは事業の種を探すだけでなく、新しい挑戦への意欲を持つ社員と出会う場にもなっている。
かつて20〜30代の若手チームが介護事業を育てたように、学研は今も、社員の挑戦を次の成長につなげようとしている。
「事業」ではなく「社会課題」を見つめる
「両利きの経営」という言葉から、多くの人は既存事業と新規事業の両立を思い浮かべる。
しかし、学研の事例が教えてくれるのはそれだけではない。重要なのは、何を守り、何を変えるのかを見極めることだ。
学研は『学習』『科学』を手放した。本社ビルを売却した。若手社員の力を信じ、介護事業に積極的な投資を行い、時には赤字も受け入れながら未来への種を育てた。
さらに教育出版社から、介護・福祉、医療、保育、さらには海外事業へと領域を広げてきた。M&Aで手を携えた企業は124社(※2025年9月時点)にのぼる。
それでもグループが一つの方向を向き続けられたのは、「人の可能性をどこまでも追求する会社へ」という共通の大志があったからだ。
一方で、創業以来変わらなかったものもある。それは、「社会課題の解決を通じて人々の人生を支える」という使命だ。


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