もちろん、長年のロシア依存からの脱却は容易ではない。
2026年の総選挙では、ロシアから農産物の輸入制限や天然ガスの供給見直しといった露骨な経済的威圧を受け、さらにオンラインでの偽情報の拡散やサイバー攻撃といった複合的な選挙介入を受けた。
それでも親欧米路線を維持するパシニャン政権が勝利したことは、対露依存から脱却し、欧州統合や地域正常化を進める「複線化外交」への国民の意志を示している。
プーチンに頭を下げさせた国「アゼルバイジャン」
南コーカサス三国の中で地政学的に恵まれ、近年では別格の存在になったのがアゼルバイジャンである。
ロシアから完全に自立し、2024年の航空機墜落事故(ロシアの防空システムによる誤射)をめぐっては、プーチン大統領に明確な謝罪と補償を求めて実現させた。旧ソ連諸国の大統領であれば煮え湯を飲まされるのが普通だが、プーチンに頭を下げさせた事例は極めて稀有である。
この強気を支えているのが、カスピ海に眠る豊富な石油と天然ガスだ。
ソ連崩壊後、いち早く欧米の石油会社を受け入れ、ロシア領を通らずに欧州へ抜ける「BTCパイプライン」を稼働させたことで、経済的な自立を果たした。
さらに、中国向けにもパイプラインを建設し、ロシアと中国を天秤にかけて価格交渉力を発揮できるようになった。ウクライナ戦争後、欧州のエネルギー安保のハブとしても重要性を増している。
経済が強くなったことで外交は多角化し、2020年の戦争ではトルコやイスラエルの最新型ドローン兵器などを導入して勝利を収めた。アゼルバイジャンは、資源をテコに複数の輸出先を確保し、大国間の競争を利用して生き残りを図るバランス外交に見事に成功している。

