新刊『低山遭難 「まさかの遭難」から生きて帰った人たち』を上梓した羽根田 治氏が、直近のクマ被害事例を整理し、登山者が知っておくべきクマ遭遇のリスクについて解説します。
都内の山はクマの生息地
今年の5月17日、奥多摩・三ノ木戸山の小中沢林道を下山していたロシア国籍の30代男性がクマに襲われ、顔や腕に重傷を負うという事故が起きた。
さらに7月7日には、56歳男性が奥多摩・三頭山の鞘口峠付近で親子連れと見られるクマに遭遇。追い払おうとして足を蹴り上げた際にバランスを崩し、10mほど滑落して顔と膝を負傷した。
立て続けに発生したこれらの事故を受け、奥多摩では複数の登山道が閉鎖される措置がしばらくとられていた(8月1日までに解除)。
東京近郊のハイキング・登山エリアとして人気の高い奥多摩は、一年を通して多くのハイカーや登山者で賑わっているが、そもそもはクマの生息地である。
今から約12年前の2014年9月、よく晴れた日曜日の川苔山では、34歳男性が人通りの途切れた山頂直下の登山道上でばったりとクマに出くわし、襲われて重傷を負うという事故も起きている。
この事故は一部のメディアで報道されていたが、それほど大きな騒ぎにはならなかった記憶がある。
また、その後、奥多摩でクマによる人身事故が起きたというニュースも聞こえてこなかった。
奥多摩の登山口となる青梅線の各駅やコース上には、「クマ出没注意」の看板や直近の目撃情報などが掲示されているが、登山者がクマのリスクについてしっかり認識していたのかどうかは疑問が残る。
今春の人身事故を受けて、ネット上などでにわかに「奥多摩はクマが怖い」と騒ぎ立てられたところをみると、これまではクマを自分も遭遇するかもしれない切実なリスクとして考えていた人は少なかったように思う。


