Bさんは退職後、クリニックなどでの勤務を経て、現在は一般企業で働く。外の世界に出てたどり着いたのが「バウンダリー」という考え方だった。患者や同僚と適切な距離を保つという意味だ。
患者を思うあまり、休日も患者のことを考えてしまう。自分が家族の1人のように感情移入し、背負い込んでしまう。そういう看護師は少なくないが、Bさんは「自分は専門職として、患者さんや家族を支援している」と意識することの大切さを学んだという。
新卒看護師の配属方法がもたらす効果
こうした感情労働への対策として、現場で工夫を重ねる病院もある。
神奈川県内のある総合病院では、4年前から新卒看護師の研修制度を見直したところ、退職者数の減少につながった。
通常、看護師の配属は入職前に希望を聞いたうえで、病院側が各部署の充足状況や本人の適性などを踏まえて決定することが多い。しかし、この病院では内科と外科の両方を経験するローテーション研修を導入した。新卒看護師は就職後、この研修を通して仕事内容や人間関係を経験し、そのうえで配属先を希望。98%が望んだ部署に配属されているという。
看護師を適材適所に配置できた結果、「感情労働や配属後のギャップに関する訴えは減った」と、教育委員長を務める看護師長は話す。
このほかにも、若手とベテラン看護師が一緒に薬や検査のオーダーを確認したり、休憩室などで顔を合わせた際に日々の困りごとや悩みを吐き出せるように環境を整えたりしたことで、部署の風通しがよくなった。これらも効果を後押ししているという。人間関係や業務内容を、“配属されてから我慢して慣れる”ものにしない。そのことが、離職防止につながっている。

