会見では建物の耐震性や爆発の原因に関する質問も多く出た。
イオンモール熊本では、10年前の熊本地震でも建物に被害を受けた。その後、現在の新耐震基準に基づく設計・施工を施して、再オープンに至っている。そのため吉田社長は会見で、「新耐震基準を満たした建物として国からも認可を受けている」として、地震の揺れに対しては一定の備えがあったと強調した。
ただし、今回のような大規模な爆発事故は他のイオンモールにおいても過去に例がないという。吉田社長自身もかつて運営会社のイオンモールの社長や取締役などを長く務めたが、「このような爆発が起こるとは想定していなかった。東日本大震災のときもなかった」と話し、困惑した様子を隠さなかった。
爆発の原因について、警察や行政の関係者からは「ガス漏れが原因ではないか」という指摘が出ている。この点について、吉田社長は「(まずは)消防の見解がきちんと出るのを待ちたい」とする一方、「熊本は2005年に開店していて、その時から(LPガスを)使っている」と説明した。
会見に同席したイオンモールの大野惠司社長によると、フードコートの調理などにLPガスを使用していて、ガス漏れが発生した際には自動で遮断弁が起動したり、バルブが閉められたりする措置が取られるようになっていたという。ガス設備は26年3月12日に自主点検、さらに6月10日にも法律で定められた定期点検を行っていたが、事故当時、どのような状況だったのかについては「消防と一緒に調査をしている」(大野社長)との回答にとどめた。
ガス漏れが原因と特定されたわけではないが、消防も建物内のガス管の配置などを従業員から聞き取り、調査を進めているという。
「災害に強いモール」の信頼揺らぐ
今後について、吉田社長は「経営のことは二の次、まずは人命優先」としている。現在は救助活動に専念しており、イオンモール熊本の営業再開時期はまだ見込みが立っていない状況だ。
一方、今回の事故を受けて、吉田社長は全国のほかの施設でも「一斉点検をただちに始めている」と述べ、安全確認を進めていることを明らかにした。
イオンモールは国内各地で30年以上にわたって営業を続ける大型商業施設だ。26年7月時点で国内の店舗数は163に上り、国内のショッピングモールとしては最大の店舗数を誇る。
かつては、地元の商業に与える影響が大きすぎるとして出店に難色を示されるケースもあったが、とくに東日本大震災以降、「災害に強いモール」として地元自治体と防災協定を結ぶなどして出店や運営を行うケースも増加。日頃の買い物先としてだけでなく、防災拠点としての役割も担うことで、行政や地域からの信頼を厚くしてきた。
それゆえに、今回の事故が与える影響はあまりにも大きい。建物の安全性や信頼が揺らいだことで、地域との関係や施設への安心感が崩れることにもつながりかねない。
熊本では今も救助活動が続き、被害の全容もまだ明らかとなっていない。爆発の原因究明にも、相当の時間がかかるだろう。
もっとも、原因がわからなくても、すぐに取り組める対策はいくつかある。施設や設備の緊急点検のほか、各施設の避難計画やマニュアルを見直して、今まで以上に周知を徹底したり、訓練の実施回数を増やしたりすれば、それだけでも着実に防災体制の底上げにつながるはずだ。
未曾有の事態となった爆発事故をきっかけに、イオンモールの安全は揺らぎつつある。人命救助に最優先で取り組むとともに、2度と同じような大惨事を繰り返さないため、速やかに再発防止策を実施していくことが今、強く求められている。

