気象庁は28日午後4時27分ごろ、熊本県熊本地方で震度7を観測する強い地震があったと発表した。イオンモール熊本では地震後に爆発事故が発生した。原子力発電所に異常は出ていないものの、九州地方には半導体や自動車の工場が集積しており各社は影響確認に追われている。
同庁のウェブサイトによると、マグニチュードは7.1と推定、震源の深さは16キロだった。熊本県宇城市や氷川町で震度7、八代市や宇土市で震度6強、菊陽町では震度5強が観測された。

木原稔官房長官は28日夕刻の臨時会見で、地震発生を受け、政府が官邸危機管理センターに官邸対策室を設置したと発表。高市早苗首相から地方自治体とも緊密に連携し、被災者の救命救助等の災害応急対策に全力で取り組むよう指示があったことを明らかにした。消防庁によれば、重要施設の被害は現時点ではないという。
高市早苗首相は今回の地震を受け、内閣府の調査チームを現地に派遣したと明らかにした。人的・物的被害については確認中とする一方、怪我人がいることや、道路や橋の損傷、建物の倒壊があると話した。
政府は建物倒壊などの被害状況を踏まえ、非常災害対策本部を設置した。本部長を務める高市首相は28日夜の会合で、地方自治体と緊密に連携し、一刻も早い全体的な被害状況の把握と被災者の救命・救助などに全力で取り組むよう関係閣僚らに指示した。「できることはすべてやる」とも語った。熊本県知事からの災害派遣要請を受け、自衛隊が約3600人態勢で被災地での活動を順次実施していることも明らかにした。
停電も発生
原子力規制庁、九州電力の広報担当者は、原子力施設に関して現時点で異常なしと明らかにした。川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機と玄海原発(佐賀県玄海町)4号機は現在も稼働しているという。火力発電所設備へ被害もない。
また同社傘下の九州電力送配電のウェブサイトによると、熊本県内の約4万7980戸で停電が発生している。復旧見込みは確認中だ。
交通機関や物流にも影響が出ている。JR九州は、九州内のすべての線区で列車の運行を見合わせている。JR西日本では、山陽新幹線は東京方面行きの一部列車に遅れがでている。西日本高速道路では通行止めが発生している。
日本航空は、28日に熊本発着の6便欠航、833人に影響影響ががあるとした。また全日空では熊本空港発着便で欠航など運航への影響が発生している。熊本空港については、現在、施設の安全確認中という。ヤマト運輸は、熊本県全域で営業を停止している。
イオンモールで爆発
イオンの広報担当者によれば、熊本県嘉島町にあるイオンモール熊本で爆発があった。爆発の前に顧客や従業員の避難をしていたが、安否状況は確認中という。消防庁災害対策本部は午後7時時点の情報として、嘉島町の商業施設2階部分が崩落して閉じ込めが多数発生しており対応中だと発表した。
セブン-イレブン・ジャパンによると、熊本県内の数店舗が休業しており、約30店で停電が続く。建物や従業員などへの被害は確認中という。ENEOSホールディングスによると、大分製油所は稼働を継続しており、同社の拠点や社員への影響確認されてない。
日本製紙グループの広報担当者は、熊本県八代市内の工場で煙突が倒れており、詳しい被害状況を確認中とした。
日産は生産継続
製造拠点への影響も懸念される。内閣府の資料によれば、23年時点で半導体製造装置製造業の出荷額では熊本県が最も大きかった。
台湾積体電路製造(TSMC)の広報担当者によると、同社の熊本県菊陽町の工場では従業員の安全を最優先し、予防措置として従業員を速やかに避難させた。同工場では自動車などにも使われるロジック半導体を製造する。
同県には、画像センサーを作るソニーグループ傘下の工場があるほか、半導体製造装置の東京エレクトロンも半導体ウエハーに感光剤を塗って現像する装置などを作る拠点を持つ。三菱電機のパワー半導体製造拠点もある。
東京エレクトロンの発表文によれば、これまでのところ、建物・設備に大きな損害は確認されていないが、29日は合志事業所および大津事業所の稼働を停止し、安全点検を実施する。
堀場製作所の熊本県西原村の半導体製造装置関連機器工場について、大きな人的、物的被害は今のところないと産経新聞が報じた。
トヨタ自動車は地震の影響で安全や物流の状況を考慮し、福岡県内の宮田、刈田、小倉工場の28日夜の操業を停止すると発表した。29日朝からの再開を予定している。また、現時点で人的、物的な被害の報告はなく、物流や仕入れ先への影響は確認中だという。
ホンダは二輪車などを製造する熊本製作所(熊本県大津町)の稼働を停止したと共同通信が伝えた。共同によると、関連会社工場では複数の負傷者が出ている。近隣の福岡県では日産自動車も工場を運営するが、同社の広報担当者は、地震による死傷者・負傷者は報告されておらず、計画通り生産を続けているとした。
三井住友海上火災保険の広報担当者によると、災害対策本部を都内本社に設置した。被害状況などを確認するための拠点は熊本県内に設置する予定だ。
--取材協力:小野満剛、佐野七緒、松山かの子、梅川崇、広川高史、林純子、照喜納明美.
著者:前川祐補、稲島剛史、吉田昂

