2026年2月には女性をターゲットにした期間限定商品、「亀田の柿の種 トレイルミックス」を発売している。従来の「柿の種」のほかに、チョコレートをコーティングしたタイプとバナナチップス、アーモンド、カシューナッツを組み合わせ、「ビールのおつまみ」とは一線を画す商品とした。素材由来のビタミンEや鉄分も摂取でき、「罪悪感を感じることなく、お菓子で気持ちを満たしたい」という客層へのアプローチを試みている。
ロングセラーに必要だったもの
60年前に偶然生まれた「ピーナッツ入り柿の種」は、パッケージを変え、比率を変え、差別化の軸をも変えながら多くの人に愛され続けてきた。一方で、変わらなかったものもある。それは、発売以来受け継がれてきた製造方法と、顧客の声に耳を傾け続けること。加えて、「リズミカルな食体験」だ。
「『柿の種』の軽快な食感が生み出す食体験は、ほかのお菓子にはない魅力だと思っています。お客様からも『仕事の合間に食べると、疲れが徐々に回復していく気がする』『個包装だからパッと食べ終えたあと、すぐに次のタスクに取り掛かれる』という声をいただいています」(児浦さん)
筆者も原稿を書きながらよくつまむが、ほどよい固さの「柿の種」を咀嚼し続けていると、なんだか頭が冴えてくる気がしていた。まさか、ほかにも同じように感じていた人がいるとは思わなかった。
調べてみると、食べ物を噛むと全身の血流量が増加し、 脳の機能が活性化するらしい(※3)。「なぜか食べると原稿が捗るんだよな……」と思っていたが、そういうことだったのか。
この原稿も、例に漏れず何度か行き詰まった。「カリッカリッ、ボリッボリッ――」。60年間変わらないこのリズムに、これからも助けられていくのだろう。

