さらに厄介なのは、お客様側もAIを日常的に使っているという事実だ。
海外の調査会社が2026年に発表した調査では、B2B購買層の84%が日常的にAIを業務で活用し、66%が取引先の下調べにAIを使っているという。つまり、買い手側は「AIの出力の癖」を熟知している。そのため手抜きのAI提案書は、一発で見破られてしまうのだ。
同じ調査では、買い手の75%が「AIの推薦や情報は信頼しつつも、契約前には必ず人間が検証する」と回答している。営業がAIの作った提案書をそのまま持ってくると、この検証プロセスに耐えられず、細部でボロが出てしまうのだろう。
AIには「初稿」を任せ、人間は「設計」を担う
では、AIをどう使えばいいのか。答えは、役割を明確に分けることだ。
営業提案書の作成プロセスは、大きく3つに分けられる。
(2)初稿 → AI
(3)検証 → 人間とAI
設計の段階では、AIに任せる前に人間が決めるべきことが3つある。この提案の背景は? お客様固有の課題は? どんなベネフィットを望んでいるのか? この3つはAIと壁打ちしても、決して出てこない。
初稿の段階では、AIに渡す情報の量と質だ。とりわけ商談でお客様が実際に語った言葉を、要約せずにそのまま渡すことだ。提案書の中に顧客自身の言葉が反映されていると、お客様は「自分の話をちゃんと聞いてくれた」と感じるものだ。
検証の段階では、AIを「最も手ごわい意思決定者」として使う。
「なぜ今行う必要があるのか」
「この費用は本当に妥当なのか」
「他社の提案と比べて、何が違うのか」
このように、厳しい目でAIに提案書を評価・検証させる。同僚に頼むと遠慮・忖度が生まれるもの。厳しいお客様をAIに演じてもらうことを依頼しよう。
提案書をお客様に見せる前に、最後に一つだけ確認してほしいことがある。
「自社の名前を競合他社の名前に置き換えても、この提案書は成立するか」
もし成立してしまうなら、それはまだ「平均的な提案書」の域を出ていない。お客様の言葉、業界特有の事情、自分自身の言葉での説明。これらがきちんと組み込まれているかどうかを、提出前に必ず確認しよう。
効率を追い求めることと、お客様の心を動かすことは、必ずしも両立しない。だからこそ、AIに任せる部分と、人間が最後まで責任を持つ部分を、はっきりと分けておく必要があるのだ。

