考えてみれば、未経験の人がいちばん伸びるのは、こういうときなのかもしれない。任され、人前に立たされ、逃げ場のない場所に置かれたときだ。
繰り返し、ステージに立ち、先輩に囲まれ、何万人に見られる。環境が、人の顔つきを変えていく。オーディション中や加入当初こそ、“一橋大生”という肩書が注目されがちだったが、篠塚を支えているのは、何よりも、この愚直な継続力だと思えてくる。
加入を決めた最終審査で、佐藤勝利は篠塚を「どうなるかわからない。ある種、そこに賭けてみたい魅力がある」と評していた。いわば"賭け"だった。それが1年半後、2度目のアリーナツアーを前にして、佐藤はグループの成長を「まじまじと感じる」と言い、年下3人の「2年目のステージング」を讃えていた。
江國香織作品で劇場デビューを果たす
オーディションを経て、timeleszのメンバーそれぞれが、映画にドラマ、バラエティと各方面で活躍している。篠塚もCMや雑誌の表紙など、止まることなく進み続けている。
しかし、映画出演は、多くのファンにとって予想外だった。
2027年に劇場公開が予定される、映画『焼却炉』への出演が、6月に発表された。篠塚にとって初めてのスクリーン出演作となる。
原作は、小説家・江國香織による、11人の少女の夏を描いた短編集『すいかの匂い』(新潮文庫)の一編。学校にも家族にもうまくなじめない9歳の少女が、ひとりの大学生との出会いを通じて、初恋にも似た感情を知っていく、繊細な物語である。監督は『PORTRAIT ポルトレ』などの内田俊太郎。本作の長尾卓磨プロデューサーが、約25年前となる学生時代に原作を読み、それからずっと映像化したいと温めてきたという。
主人公の少女・宮田梢を演じるのは、オーディションで主演を射止めた子役のかりん(撮影当時10歳)。そして篠塚が演じるのは、梢が惹かれる影絵サークルの大学生・すずきじんただ。
しかも、本作は、国内公開に先立ち、この7月に開催される第60回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で世界にお披露目される(ワールドプレミア)。カンヌやベルリンと並び語られる、歴史あるヨーロッパの映画祭だ。
「初めて映画の現場に立たせていただき、すべての瞬間が新鮮だった」。篠塚はこう言葉を寄せている。
この挑戦には、いかにも篠塚らしいエピソードがある。7月2日に行われた横浜アリーナでのライブMCで、彼はこの映画への出演が“オーディション”で決まったものだと明かした。

