加入時点では、一橋大学の現役大学生だった。住まいは、高円寺の5畳のワンルームで、部屋には鍋もフライパンもなかったと雑誌のインタビューなどで明かしている。「普通の大学生」がすでに活躍しているグループに加入し、アイドルとして華々しくデビュー。冠番組やラジオも多数出演、数カ月後にはアルバム発売、アリーナツアー、そして、年末にはドーム公演も果たした。
そして先日、映画デビューも明かされた。
書き出しても、「これは現実なのか?」と笑ってしまう。筆者は、小学生のころ少女漫画が大好きで、アイドルと一つ屋根の下で暮らして恋をしちゃう、とか、女の子が男装して男性アイドルとしてデビュー!といった漫画が好きだった。そんな筆者から見ても、篠塚は子どものころに妄想していたような”アイドルの設定”を、盛れるだけ盛ったかのような存在だ。
しかし、その”設定の強さ”だけなら、話題は一過性で終わったはずだ。この1年間、地道な努力でひとつずつアイドルらしさを体現していく過程をずっと見せ続けてきた。
蓋をしていた夢に挑戦した
篠塚は、幼い頃はアイドルに憧れていたが、「遠い存在」だと思いながら、勉強に打ち込んだ。一橋大学に進み、就職か、大学院か――そう考えていたころに、『タイプロ』の募集が始まる。歌もダンスも未経験の普通の大学生が受けるなんて。ギリギリまで悩んだ末に背中を押したのは、子どものころから好きだったTOKIOの「宙船」だったという。
変わるなら、今なのではないか。そう思ったのかもしれない。締め切り直前にオーディションに応募した。
飛び込んだ先で、菊池から「シノ(篠塚)はタイプロに迷い込んだ」と言われるほど、異例の存在だった。歌もダンスも未経験ながら、共にオーディションに参加していた原からは、「努力おばけ」と評されるほどの姿勢を見せていた。カメラのない場所を探して自主練習する姿は、菊池に「ウミガメの産卵の撮影のようだ」と言われたほどだった。
オーディション中だけではない。筆者は、番組を見ながら篠塚に好感を抱きながらも、「実際に加入して、ついていけるのだろうか」「潰れてしまわないだろうか」と、ハラハラしていたタイプだ。未経験からの参入は、本人が思う以上に過酷なはずだ。周囲は経験者ばかり。それまで普通の大学生だったところから、アイドルになる。恥ずかしさもあったのではないか。それでも彼は、逃げずにそこに立ち続けた。

