山下知事によると、上告しない理由は①高裁判決には説得力がある②参加人が上告した後は被参加人が上告することは不適法という最高裁判例があり、県は法律上、上告できない――というもの。特に①については、県が林地開発許可を下した審査基準の歴史や雨量データについて独自に調べ、奈良県の審査基準の内容や運用に不合理な点があるとした高裁判決は「説得力がある」との判断に至った。
山下知事によると、奈良県が審査において使った2つの基準は大正5〜昭和55年(1916〜1980年)のデータを使って算出した「降雨強度式」を使っており、見直しを考えたことはあったが、結局は見直さなかった。また、大阪高裁判決は、雨が10時間続いた場合の総雨量147mmに対応した調整池を計画すれば十分、とした県を批判。メガソーラー建設造成地から約3km離れた生駒山観測所の記録に着目し、49年間に日降水量(24時間の総雨量)が147mmを超えたケースが5回あることを示した。
山下知事が配った資料によると、県が独自に雨量データを調べたところ、日をまたいで24時間に降った降水量が147mmを超えたケースは、過去10回あったという。
「建設造成地は危険な状態。工事停止や県の指導が必要」と訴える弁護団
奈良県知事の記者会見に続き、原告住民弁護団や土砂災害に詳しい専門家が奈良地方裁判所の近くで記者会見を行った。奈良地裁判決で敗訴したが大阪高裁の判決で逆転勝訴をつかんだ原告住民らは、判決の6日後には、判決確定まで林地開発許可の効力を停止する「執行停止」を大阪高裁に申し立てている。
その申し立ての2日後には、台風8号、7号と2つの台風が立て続けに日本列島を襲った。台風の大雨が降った6月26日、生駒山観測所の日降水量は162mm、建設造成地から約1.6km離れた奈良県の若葉台観測所では、6月27日の午前1時までの24時間に199mmの雨が観測された。高裁判決が指摘した近年の大雨の増加が、台風により実証された形となった。26日から27日にかけ、メガソーラーの建設造成地では、斜面からの土砂流出や調整池の漏水が起きた。

