利用者の多くは高齢となった中国残留孤児とその二世で、一部には在日華人の高齢者もいる。いずれも日本で暮らす子どもを持つ人々だ。一笑苑は、年齢を重ねた中国残留孤児を支える介護・福祉サービスの拠点として誕生した。利用者たちが安心して集い、中国語で語り合える貴重な居場所となっている。
中国残留孤児は日本人でありながら、日本語を十分に話せない人も少なくない。その多くはすでに80代を超え、配偶者とともに高齢期を迎えている。加齢に伴う身体機能や認知機能の低下により、介護や医療の支援を必要とする人が増えているが、言葉の壁があるため、中国語での対応が欠かせない。
こうした人々を支えるため、19年に株式会社一笑苑が設立された。一笑苑は中国語による介護サービスを専門とする介護グループだ。
現在、一笑苑は東京、横浜、埼玉、大阪で計8施設を運営し、利用者は1000人を超える。埼玉県戸田市と大阪府東大阪市では、デイサービスや訪問介護に加え、入所サービスも提供している。中国残留孤児とその家族にとって、安心して老後を過ごせる貴重な支えとなっている。
デイサービス施設を訪れて目にした“意外な光景”
私が見学した一笑苑板橋デイサービスでは、利用者は1日約7時間を施設で過ごしている。平均年齢は約85歳。利用者たちはスタッフや仲間と談笑し、ゲームや体操を楽しみながら穏やかな時間を過ごしていた。スタッフは日常的な見守りに加え、服薬管理や入浴介助も担い、高齢者の暮らしを支えている。
利用者たちが最も楽しみにしているのは昼食の時間だ。提供されるのは本場の中国家庭料理で、ときには餃子や肉まんも食卓に並ぶ。現在の最高齢利用者は103歳の残留孤児の配偶者で、一笑苑で麻雀やトランプを楽しむ。なかには残留孤児とその配偶者が週6日通所するケースもあり、この施設が生活の大切な一部となっていることがうかがえる。
春節や中秋節などの伝統行事には、女性利用者たちがチャイナドレスをまとい、中国の歌を披露する。また、中国出身の医師を招いた健康講座が開かれることもある。一笑苑は単なる介護施設ではない。中国語で語り合い、中国文化を共有できるコミュニティとして、高齢者に故郷にいるような安心感を与えている。
一笑苑板橋と一笑苑戸田の責任者を務める三上氏は53歳。中国残留孤児の三世で、介護福祉士の資格を持つ。一笑苑に入る前は病院で事務職として働き、介護の世界に身を置いて9年になる。

