矢口さんはSNSで「ここを何とかしたい」と発信した。すると中学の同級生たちが集まり、チームができた。最初に始めたのはマルシェだった。
「商店がなくなり、商売というものがなくなっていく街でした。杉戸町はベッドタウンで、多くの人は東京や大宮へ働きに行き、休日はただ暮らしている。買い物は越谷などのショッピングモールへ行ってしまう。もう一度街に『商い』を取り戻したくて、『あなたが何かできることを出店してみませんか』とSNSなどで声をかけることを始めたんです」(矢口さん)
そうした取り組みが広がり、やがて現在の「ひとつ屋根の下 100人商店街」が始まった。地域の人たちが自分の「得意」を持ち寄って、小さな商いを結ぶ。かつて杉戸町で愛され、その後なくなってしまった「横川焼き」というおせんべいを復活させ、商いにつなげるなど、地元の歴史や文化を今につなげる場所としても生かされている。
「ひとつ屋根の下 100人商店街」の建物は、取り壊しが検討されていた3階建ての駐輪場だ。現在は1階にはカフェレストランや、小さな商いのためのレンタル棚などが設置されていて、昼時になると近所に住む人たちで賑わう。
元白バイ警官がこの街を選んだ理由
そんな「ひとつ屋根の下 100人商店街」のスペースを使って、定期的に「コーヒー教室」を開催するバリスタの塚田夏希さんは、元埼玉県警の白バイ警官という経歴を持つ。福岡県出身で、埼玉県警の採用試験に合格するまで、埼玉に縁はなかったらしい。塚田さんが住む場所として、この地域を選んだのは、元警官ならではの視点だった。
「もともと白バイ警官ですから、交通事故や犯罪の発生件数がとても気になるんです。調べてみると、東武動物公園駅のまわりはかなり安全な地域なんですよね。実際にここに暮らして約6年ですが、大きな不安を感じることはなく、住みやすい街だと思っています」

