一方、駅の東側(杉戸町側)には、もう一つ注目の施設がある。それが、街の駐輪場をリノベーションしてオープンした複合コミュニティー施設「ひとつ屋根の下 100人商店街(埼玉県北葛飾郡杉戸町杉戸3-9-16)」だ。立ち上げに奔走した矢口真紀さんは生まれも育ちも杉戸町だ。
「この街で生まれて、大学から東京へ出ました。卒業後は広告代理店系の仕事を経て、六本木の独立系アートオフィスのような会社で、大きなイベントやアートプログラムに携わっていたんです」(矢口さん)
都会の生活はいいことばかりでなかった
上海万博の年には、3億円規模の仕事も担当したという。しかし、都会の生活はいいことばかりではなかった。
「ある大きな仕事が終わったとき、自分の中には何も残っていないと感じました。仕事としてはある程度評価されるようになっていたんだけど、でも、いったいこれで誰が喜んでいるのだろう、なんて考えるようになって……」
悶々とする毎日だったが、故郷の惨状に触れたことがきっかけとなり、自身の道が開けた。
杉戸町へ戻ったのは、今から12年ほど前のこと。本人の言葉では「東京をやめた」「東京を捨てた」という感覚だった。青春時代を過ごした杉戸町は、通りの両側に商店が並ぶ繁華街だったが、戻ってみると当時あったファンシーショップや電器屋などは、そのほとんどが閉店していた。矢口さんは、そのときの衝撃をこう振り返る。
「東京から小1時間の場所が、こんなに寂れていたのかと驚きました。一方で『帰る理由ができた』とも思ったんです。この寂れた商店街を何とかする。エネルギーのなくなった街にエネルギーを吹き戻すのは、とても魅力的な思いつきでした」

