同校では、サークル活動の一環で「放課後授業」という名の学生の飲み会も自主的に開催され、各々親睦を深めているという。
ある80代の男性は「それぞれバックグラウンドがある人たちですけど、素性や経歴はほとんど聞かないです。共通の話題があるから盛り上がるんです。『今日の講義のここは面白かったな』とか、史跡探訪した時のこととか。この年で、飲み友達ができるなんて思いもしませんでしたよ」と語った。
仲間と出会うことで、身だしなみにも変化が現れるという。確かにシニア学生を見渡すと、小ぎれいな格好をされていることに気がつく。
「最初はジャージで来ていた方が、いつの間にかポロシャツと綿パンでさわやかに変身して受講されるようになりました。周りが綺麗にしてるから、自分も変わろうって思うみたいです」と矢澤さん。
なかにはコミュニケーションが苦手で、人と関わることを嫌がる人も入学すると言う。だが、午後に行われる選択授業では、先輩の学生らがこまめに新入生に話しかけるそうだ。
そのおかげか、入学者たちが孤立しにくい雰囲気につながっている。関西人ならではの「ちょっとしたおせっかい」な性質が、学生の中でマイルドな相乗効果を生んでいるように感じた。
奈良シニア大学が求められる理由
ある男性学生が「これ、私の名刺です」と、奈良シニア大学のイベント実行委員の肩書きが入った名刺を、少し誇らしげに手渡してくれた。人によっては、サークルの世話係や文化祭の実行委員を任される学生もいるという。
定年退職で「会社」という看板を失った彼らにとって、「自分はこういうものです」と伝える手段は希少だろう。「誰かの役に立って、自分の存在意義を見出せることが大切なんだと思います」と矢澤さんは語る。
毎週1回はおしゃれをして外に出ること、知らないことを学ぶこと、人に頼られること、そして、誰かとつながれること――。この4つの循環が、奈良シニア大学が求められる理由なのだろう(後編に続きます)。

