変わっていくもの、変わらないもの
2004年から再開発が進む折尾はいま、変わろうとしている。線路の高架化が進み、駅の北側には新しい駅舎ができた。2028年度までには、かつての飲食店街跡地を中心にマンションやホテル、シェアオフィスなどを備えた新たな駅前エリアが完成する見込みだ。
東筑軒もまた、変わろうとしている。105年続いてきた店は「駅弁から、地域の食堂へ」と掲げ、本格的に駅の外へ出ていこうとしている。
一方で立ち売りは、いまも変わらない。
小南英之さん(66)は東筑軒で立ち売りを続けて13年。歌うようにゆっくりと手を振り上げひらりひらりと手を舞わせて、腹の底から声を響かせる。「おべんとーう、おべんとーう。東筑軒のおべんとーう」。電車が動き出すと、「行ってらっしゃーい」と声を伸ばして見送る。
ホームにいる人たちは、声をあげる小南さんを見てもまったく驚かない。ちらりと目をやって、通り過ぎていく。ここでは、見慣れた光景なのだろう。
取材の朝、筆者が「お弁当をひとつ、ください」と声をかけると、小南さんは両手で弁当を掲げ、深々と頭を下げた。「いらっしゃいませ。今日、一番最初のお客様です」。
折尾駅のホームには今日も「おべんとーう」の声が響く。
後編では、事業譲渡により、2025年11月に新しく社長に就任した山内裕太さんに、この半年の舞台裏を聞いた。

