この特性を生かして店舗数を伸ばしたのがまいばすけっとだった。まいばすけっとは2005年にイオンリテールの新規事業としてスタートし、都市部で小商圏のニッチな立地で着実に店舗を増やしてきた。2020年にはフルセルフレジを導入するなど、ローコストオペレーションを追求し、家賃が高く採算が取りづらい都心部でも、利益を生むことができるような店舗フォーマットを磨いてきた。そもそも条件の悪い立地での出店が多いこともあり、まいばすけっとの周りには他社は出店しにくい。
「隣接地域にまいばすけっとがあるのに、またまいばすけっとができた」という場面を目にしたこともあるかもしれない。まいばすけっとは、狭い商圏に店舗を密集させるドミナント展開をするが、同じ商圏で60坪の店舗が10店舗あれば、標準的なスーパーマーケット1店分の商圏をカバーできる、といった発想で出店を重ねていると考えると良い。
2026年2月期は前期比で119店舗が増加したまいばすけっと。イオンの中期経営計画では、2030年には2500店舗体制、売上高7000億円を目指しており、まだまだ出店の手を緩める様子はない。
かたやTRIAL GOは、2027年6月期から2029年6月期までの3年間で100店舗を出店する計画である。店舗網の厚みと出店スピードを比べれば、都市型小型店舗の市場では、まいばすけっとの優位は当面揺らぎにくい。
トライアルの本当の狙いとは
ただし、トライアルの狙いは、都市型小型店舗市場だけとは限らない。
トライアルはスーパーセンターやディスカウントストアのイメージが強いが、祖業はITである。グループ内にRetail AIという技術子会社を持ち、棚管理システムや顔認証決済などのリテールDXを進めている。レジ機能付きカート「Skip Cart」のシステムは、自社利用だけでなくグループ外への販売も行っている。
トライアルのビジョンは「テクノロジーと、人の経験知で、世界のリアルコマースを変える。」であり、基本的にテックを生かしたコマースを考える企業なのである。となれば、TRIAL GOが提供している24時間営業・省人化店舗の仕組みそのものを他社に外販する可能性もある。首都圏でのTRIAL GOの出店は、小売店としての新フォーマットであると同時に、外販のためのショールーム、あるいは実証店舗としての意味合いを持っているのかもしれない。店舗で日銭を稼ぐより、システムを売るほうが利益率も高い。本来は技術力に強みを持つ会社なのだから、そういった戦い方をするのは自然だ。
おそらく、都市型小売店舗の領域でまいばすけっとの牙城を崩すことは当面困難だろう。ただ、TRIAL GOは、まいばすけっとと戦っているわけではなく、リテールテックが主戦場なのではないか。まいばすけっとの本当の戦いは、今後さまざまな小売店がこうしたリテールテックを駆使して、都市型小売店の市場に攻め込んでくることなのかもしれない。

