つくばエリアの潜在力 TX開業10年ますます快調
今年の9月には、つくば駅前にカフェや飲食店のほかに保育園や学習塾なども入る複合商業施設「BiViつくば」もグランドオープンした。電気、家具などを取り扱うロードサイド型大型専門店、ファミリーレストラン、コンビニエンスストアなども急ピッチで立地が進んでいる。高所得者層が多いことからアウディ、レクサス、ポルシェといった高級自動車の販売店も出店している。
高速道路の開通による
巨大物流拠点が誕生へ
交通インフラもTXだけではない。今年の3月にはJR上野東京ラインが開業し、常磐線が東京駅や品川駅まで乗り入れるようになって都内へのアクセスはさらに利便性を増した。さらに、高速道路の整備が進んでいることも見逃せない。工事が進み、圏央道(茨城区間)が開通すれば、東北道・関越道・中央道・東名高速・常磐道・東関道を結ぶ高速交通ネットワークが完成し、交通の利便性がますます向上する。そうなればつくばエリアは北関東で最大の高速交通ネットワークの結節点になる可能性がある。それを見越して、近年このエリアに巨大な物流拠点を設ける企業が相次いでいる。
このようなつくばエリアの急速な発展を支えているもう一つの力が、茨城県の自治体としての強力なバックアップだ。
つくばエリアには広大な県有地があり、これまでに約166ヘクタールを販売してきた。それでもまだ約250ヘクタールの県有地が残っており、県は事業用地として民間企業に販売しているだけでなく、住宅地として個人向けにも販売しているのだ。特に事業用地については、駅の近くなどの一等地も多く、中小企業向けには用地を分割して販売するなどの配慮もしている。もちろん新たに事業所を設けた企業などに対しては一定期間税を減免するなどの優遇制度も用意している。
2016年5月には、伊勢志摩サミットに併せて行われるG7科学技術大臣会合がつくば市で開催される。県や市はそこに向けてさまざまなイベントなどの仕掛けを準備している。これによりこの一帯がまた一段と活性化するだろう。
つくばエリアの進化はまだまだ終わりそうにない。
つくばエクスプレス沿線 住宅用地セミナー
10月9日、つくば市内のイーアスホールで開かれた「つくばエクスプレス沿線 住宅用地セミナー」では、住宅新報特別編集委員・論説主幹の本多信博氏が「都心居住促進で、どうなる郊外不動産市場」と題した特別講演を行った。この講演で本多氏は、「街自体が雇用の場を創出しないと高齢化が進むばかりであり、職住近接が大きなテーマになる。東京圏では郊外を都市化していくことがポイントになる」として、TX沿線は一般の勤労者でも戸建て住宅を買うことができる希少価値の高いエリアだと評価した。また資産性と災害対応力を持つ戸建て住宅が見直される時代が来ると指摘し、つくばエリアには、都心にない郊外ならではの魅力づくりに挑戦してほしいと要望した。
さらに、「これからは家を選ぶのではなく、住みたい街を選ぶ時代になる。これからまちづくりが本格化するTX沿線に対する期待は大きい。明確なコンセプトを持った街であることを情報発信してくことが重要になる」と指摘。高齢化を中心としたさまざまな問題が山積している日本で、課題解決型のまちづくりに成功すると、そのノウハウを世界に輸出することができるとも言われている。TX沿線には夢があり、ビジネスチャンスが十分備わっている。