新宿在住の石鍋さんにとって、クールは「日常に溶け込んでいる存在」だという。飲み会が終わってまっすぐ帰りたくないときや、本や洋服を買って楽しい時間の余韻に浸りたいときなど、さまざまな機会に訪れている。
過ごし方は、コーヒーを飲みながら煙草を吸い、ぼんやりするというもの。何をするわけではないが、それが「ほかでは埋められない時間」だと石鍋さんは続ける。
「用事が終わってそのまま帰るより、楽しい時間の余韻を噛み締めたいときに、よく寄ります。ほぼ24時間営業なので、いつでも開いているということも、心の支えになっている。そういう意味では居場所というか、コーヒーチェーン店とは明らかに役割が違いますね」
店内ではヤクザが密談し、風俗店の面接が行われ…
10年以上、週1回はクールに通っていたと話すのは、農業を営む高野馨太さんだ。高野さんも、クールの魅力の1つを「窓から見える景色」だと話す。もう1つは、居合わせたさまざまな人の会話が、自然と耳に入ってくることだという。
あるときは隣の席で、違う組のヤクザの幹部と思われる人たちが、それぞれの縄張りについて話し合っていた。またあるときは、風俗店の面接をしており、女性が堂々と自分の性癖を口にしていた。その女性の姿を見て、高野さんは感銘を受けたという。
「新宿に吹く“リベラルな風”を感じました。歌舞伎町には、いろいろな個性を持つ人が集まっていて、ここでは自由に暮らしていいんだ、という期待をそのときに持ちました。クールは、歌舞伎町を象徴するお店だと思いますね。同店を通して、自分は歌舞伎町を愛していました」

