最初の「AIネイティブ」
5月から6月にかけては、アメリカでは卒業式シーズンだ。大学の卒業式における祝辞は、数百年にわたり受け継がれてきた由緒ある伝統である。著名な人物が招かれ、若き卒業生に向けて、人生の知恵を短い言葉に凝縮して贈る。
なかでも、2005年にスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で語った「毎日を人生最後の日だと思って生きよ、ハングリーであれ、愚かであれ」というメッセージは、今なお伝説として語り継がれている。
筆者自身、18年にシリコンバレーのメンロ・カレッジで卒業式の祝辞を述べた経験がある。わずか10分で新世代を奮い立たせることの難しさを、私はよく知っている。一生の記憶に残る日に、何千人もの前で語ることは、並大抵の精神力で務まるものではない。
26年の卒業生は、人類史上特別な世代である。彼らは大学生活のすべてを生成AIと共に歩んだ、最初の「AIネイティブ」だ。しかし皮肉にも、彼らはAIと共に歩む自分たちの未来に、決して楽観的ではない。今年4月のギャラップ調査によれば、14〜29歳の若者の82%が、AIがもたらす悪影響に懸念を示している。
YouGovとエコノミスト誌の調査でも、米国人全体の71%が「AIの開発速度は速すぎる」と感じている。通常なら新しいテクノロジーに最も熱狂するはずの若い世代が、逆にAIへの強い不安を抱えている。ここに、いまという時代の逆説がある。
グーグル元CEOの祝辞に浴びせられたブーイング
彼らの不安は今年、全米各地の卒業式で鮮明に表れた。
この記事は有料会員限定です
残り 2562文字


