6月11日、国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)2026が、アメリカ・メキシコ・カナダの3カ国共催で開幕した。ワシントンの識者の間では、「『FIFA平和賞』を初受賞したトランプ大統領は、W杯共催国メキシコを爆撃するのだろうか」という皮肉めいたジョークすら飛び交っている。
というのも、トランプ政権は支持基盤への政治的アピールから、いずれメキシコの麻薬カルテル関連施設を攻撃するかもしれないといった臆測があるからだ。すでにCIA工作員がメキシコ国内に潜入し、秘密裏に麻薬取り締まりで活動していたことが明らかとなっている。
貿易拡大と裏腹に、麻薬摘発めぐり対立
トランプ政権下で北米3カ国間の政治的緊張はかつてなく高まっている。
足元ではアメリカとメキシコの貿易は前年比で拡大し、経済関係は強固さを保っている。その一方で、両国間の政治的対立が新たに注目を集めつつある。
メキシコのホルヘ・カスタニェーダ元外務大臣は、両国関係について「1970年代以降で最悪」と評した。今回の対立が過去より深刻とされるのは、複数の問題が同時並行で噴出しているためという。
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、トランプ政権の圧力を受けてキューバ向け原油輸出の停止、対中関税の引き上げ、麻薬カルテルの重要メンバー92人のアメリカへの身柄引き渡しなど、アメリカ側の要求に協力的な姿勢を示してきた。しかし、現在、両国関係の緊張を決定的に高めている要因が、直近までシナロア州知事を務めていたルベン・ロチャ・モヤ氏を巡る問題である。
4月、ロチャ・モヤ氏は賄賂を受け取る代わりに麻薬組織シナロア・カルテルを保護したとの疑いでアメリカ司法省から起訴された。その後、同氏は知事職を一時的に離れると表明したものの、トランプ政権は依然として身柄引き渡しを要求している。これに対しシェインバウム政権は、証拠が不十分であることを理由に引き渡しを拒否している。
この記事は会員限定です
残り 2203文字
