東洋経済オンラインとは
ライフ

「なにそれ嫉妬?」働きすぎの夫を気遣った妻に放ったまさかの一言…結婚15年目の夫婦に生じた危機の"本質"

8分で読める
おつかれ、今日の私。
妻の怒りを買った夫の不用意な一言。矮小化がときに致命傷になるワケ(写真:Graphs/PIXTA)
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

焦る気持ちもわかるから、話は聞くよ。同じことの繰り返しだってかまわない。

失恋したときの私と比べちゃ申し訳ないけど、同じ話を何度もしなきゃいられないときってあるよね。まあ、いまはそういうときなんだと思う。気が向いたら声掛けてよ。こっちも掛けるし。また石川さんの店で集まろうよ。うん、少人数で。いま大変な時期だから、互助会みたいなもんだね。

子連れの家族を眺めながら、「誰かのためになら頑張れるのに」って、あなたは言う。うん、そうだね。人のために頑張れる人だよね。でもいまは、「誰かのために」の時期じゃないかもしれない。

自分のために頑張って休むのもアリじゃない? 社会にはいろんな福祉システムがあるから、当面はなんとかなるよ。

ほかの友だちはそうだった。意外といるんだよ、たくさん。私が休むことになったら、そのとき助けてよ。ははは、眠そうだね。じゃあ おつかれ! 気をつけて帰ってね。いいって、いいって。気にしないで!

友だちを乗せた電車がホームから発車したのを見届け、私も家路についた。

トンネルの出口であなたを待つ

『おつかれ、今日の私。』(マガジンハウス文庫)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「自分ばかりを責めないで」を別の言葉で伝え切れなかったのが悔やまれる。もっと社会や時代や家族のせいにすればいいのに。「ありがとう」とすぐLINEが届く。これだけ早く送ってこられるようになったなんて、たいしたもんだよ。

愛情を持って「あいつダメだなぁ」と言う人がいる。私は「ダメなところもあるなぁ」と言い直す。それなら誰もがそうだから。あいつの場合、陰で徳を積む生真面目さが、今回は裏目に出ただけだ。

暗いトンネルの真っ只中にいる人に、掛けられる言葉は限られている。そう教えてくれたのも、最初に待ち合わせをすっぽかしてくれた友だちだ。いまは元気に暮らしているが、当時、私は励ますつもりで、追い詰めるような言葉を投げかけていたに違いない。本当に申し訳なかった。

いまの私にできることは、トンネルの出口で待つ時間をたまに作ること。ずーっと待っているとうっとうしいから。時折、「お~い、生きてるか?」なんて声を掛ける。トンネルの出口に誰かがいると、うっすら伝われば私はそれでいい。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数