「教授が前に立って技術を移すより、若い学生を前線に立たせ、教授は後ろから支える方が速い」。Yu氏はそう説明した。HKUSTで学生にロボット製作を競わせる教育に切り替えた結果、教え子の一人だった汪滔(Frank Wang)氏がDJIを創業した。同社の評価額はいまや200億ドルを超える。
ここでINNOXが立てた仮説はこうだ。DJIの成功が個人の才能による偶然なら再現できないが、教育と支援の「仕組み」から生まれたのなら、同じ仕組みで次々と生み出せる。INNOXが掲げるのは、まさにこの再現である。
小学校高学年から始まる「起業家の選抜と育成」
その仕組みは、教育・インキュベーション・アクセラレーションの3本柱で組み立てられている。教育の柱では20校を超える大学と連携する。知識を教えてから応用させるのではなく、現実の課題を解かせながら数学や物理を身につけさせる。
Yu氏が挙げた例が、電動ボートを作らせ、その性能で成績をつける授業だ。速度や安定性を出すには相応の知識が要る。完成したボートの出来が、そのまま理解度を映す。
入り口になるのがブートキャンプだ。毎年1300〜1500人が応募し、選ばれた80〜90人が2週間で「動く試作品」まで作る。自分たちで課題を定義し、解決策を立て、手を動かして形にする。この2週間を観察し、半数に起業家としてのオファーを出す。
INNOXはこうした選抜と育成の対象を、大学から小学校高学年へと広げてきた。人生の早い段階ほど資質は育てられ、遅くなるほど選抜でふるい分けるしかなくなる、という考え方だ。起業家は見つけ出すより、仕組みの中で作れるという発想である。
