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金融庁で企業の開示やガバナンスを担当する新発田龍史審議官は、ブルームバーグのインタビューで、投資家は企業に対し成長ステージを無視した株主還元は求めていないとし、中長期的な企業価値向上を図るため、経営者に現預金など資産の有効活用を促した。
一方で、対話を通じて企業の持続的成長などを促す役割を担う機関投資家にも適切な行動を求めた。機関投資家の行動原則を定めた指針に基づく取り組みが不十分な場合には、受け入れを表明した投資家リストからの除外も検討課題になり得るとの考えを明らかにした。
金融庁は今年、上場会社の価値向上に向けた行動指針をまとめたコーポレートガバナンス・コードを5年ぶりに改訂する。改訂案には、取締役会の責務として成長投資を促す役割の重要性などが明記された。
新発田氏はコード改訂について、経営者に「とにかく考えてほしいというのが隠れたテーマだと思っている」と総括。過去10年間の企業統治改革により、時価総額の拡大や社外取締役比率の向上など一定の成果があったものの、「企業が本当に中長期的な価値を上げているかといえば必ずしもそうではない」と述べた。
企業の現預金活用は高市早苗首相が以前から主張してきたテーマでもある。過去には著書で「現預金課税」のアイデアを示した。昨年11月には企業が過度に資金をため込まず、賃上げを含む人への投資などに活用するよう求めた。
日本企業について新発田氏は、「自分たちが成長フェーズのどこにいるのかに関係なく、株主還元をしたがるところが特殊なのでは」と指摘。経営者は「安易な株主還元により目先の株価を維持するといった表面的な取り組みではなく、きちんと稼ぎ続けられるようなビジネスモデルをしっかり考えていく」ことが重要だと強調した。
現預金などの活用は「解釈指針」に
ブルームバーグがまとめたデータによると、金融機関を除く東証株価指数(TOPIX)採用企業1215社の現預金残高は、2025年12月末時点で、10年前に比べ84%増の130兆円に達した。現預金を最も多く保有する業種はIT(情報技術)とサービス業となっている。
今回のコード改訂では、企業が持つ現預金などの資産の有効活用に関する部分が国内外の投資家の関心を集めている。改訂案では「原則」ではなく、順守や説明の必要がない「解釈指針」と呼ばれる補足説明となったため、一部では企業行動を促す効果が後退したとの見方もある。
該当する解釈指針の案には、取締役会は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげるため、「現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できているかを含め不断に検証を行うべきである」と盛り込まれている。
新発田氏は「現預金の水準のみを下げたり、水準が高いから議決権行使で反対するといった行動は、われわれが期待しているところではない」と述べた。
また、日本企業が活用し切れていない資産は現預金のほか政策保有株と不動産の「3点セット」であるとし、「企業が持っている資産全体を見渡した上で、きちんと有効活用できているのか、そういう大きなところを投資家に説明してもらいたいという趣旨だ」と強調する。
その上で、「コードに書いてあることをやっておけば許されるという企業があるとすれば、今回の改訂は厳しくなった」と付け加えた。
投資家にも役割
一方で、新発田氏は企業価値向上を促す役割は投資家にもあると話す。金融庁は昨年、投資先企業との対話(エンゲージメント)強化などを促すため、ガバナンス・コードとともに「車の両輪」と位置付ける機関投資家の行動原則であるスチュワードシップ・コードを改訂した。
「スチュワードシップ・コードに書かれている趣旨を踏まえていないにもかかわらず、署名して外見を装うのは、機関投資家に資金を出している人たちにとっては本当にいいのかということはやはり考えていく必要がある」として、実態を把握していくと述べた。
金融庁は同コードの受け入れを表明した投資家の一覧を公表しているが、新発田氏は責任ある行動をしていない機関投資家については、「リストからの除外も含めて検討課題になる」とした。
著者:浦中大我
