東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

トランプ大統領のイラン軍事作戦に高まる悲観論…交渉力を増すイラン、揺れる同盟国、見通せない出口

5分で読める
5月11日、イランのテヘランで撮影(写真:ロイター)

INDEX

トランプ米大統領はイランに対して個別の戦闘ではほぼ全て勝利してきたかもしれないが、作戦が始まってから3カ月が過ぎた今、より大きな疑問に直面している――全体では敗北に向かっているのではないか、という点だ。

イランはホルムズ海峡に対する影響力を維持し、核問題での譲歩に応じていない。イスラムの宗教国家体制もほぼ維持されている。米軍の戦術的な成果を、説得力ある地政学的な「勝利」に結びつけられるのか疑問視する見方が広がっている。

トランプ氏は全面的勝利を繰り返し主張しているが、実態との乖離(かいり)を指摘するアナリストも多い。米国とイランは不透明な外交交渉と、トランプ氏による断続的な追加攻撃の示唆の間で揺れ動いており、軍事行動が再開されれば地域全体でイランの報復を招く可能性が高い。

米国と湾岸アラブ諸国の同盟国が紛争終結後にかえって不利な立場に追い込まれる一方、軍事的・経済的に打撃を受けたイランが、世界の石油・ガス供給の約2割を左右できる能力を示したことで、むしろ交渉力を強める可能性もある。

危機はまだ収束しておらず、専門家の中には交渉が有利に進めばトランプ氏が面子を保った形で事態を収拾できる余地が残されていると指摘する声もある。一方で、より厳しい見通しを示す向きも少なくない。

共和・民主両政権で中東交渉を担当したアーロン・デービッド・ミラー氏は「3カ月が経過し、短期的な勝利として計画された戦争が、長期的な戦略的失敗へと変わりつつあるように見える」と述べた。

「敗者」と見られることに敏感なことで知られるトランプ氏にとって、この状況は大きな意味を持つ。こうした中でトランプ氏は、明確な最終目標を示せないまま強硬姿勢からの後退や、第1期政権で破棄した2015年の核合意の再現と見られかねない妥協を避けようとする可能性があるとアナリストは指摘する。

ホワイトハウスのオリビア・ウェールズ報道官は「『エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦』において、軍事目標はすべて達成、あるいはそれ以上の成果を上げた」と強調。「トランプ大統領はすべての主導権を握っており、あらゆる選択肢を維持している」と述べた。

国内外での圧力と不満

トランプ氏は不要な軍事介入を避けると公約して再選を果たしたが、今回の関与は外交実績や国際的な信頼性に長期的な影響を及ぼす可能性がある。

停戦から6週間以上が経過する中、ガソリン価格の高騰や支持率低下といった国内からの圧力にも直面している。11月の中間選挙を前に始めた戦争は不人気で、共和党は議会支配の維持に苦戦している。

このため、一部の専門家は、欠陥を抱えつつも政治的な出口となる合意を受け入れるか、軍事的エスカレーションに踏み切りさらに長期化する危機を招くかの難しい選択を迫られていると指摘する。外交が失敗した場合、限定的な空爆を実施して最終的勝利と位置づけ、事態の収束を図る可能性もある。

また、トランプ氏がキューバ問題に焦点を移し、より達成しやすい成果を模索するとの見方もあるが、イラン作戦を過小評価したのと同様に、対キューバの課題を見誤る恐れも指摘されている。

成果と限界

作戦開始当初、米国主導の空爆はイランの弾道ミサイル能力や海軍力に大きな打撃を与え、指導部にも損失を与えた。しかし、イランはホルムズ海峡の封鎖やイスラエル・湾岸諸国への攻撃で応じ、エネルギー価格を押し上げた。トランプ氏が命じた港湾封鎖も、イランを方針転換させるに至っていない。

トランプ氏は核開発阻止や地域への脅威排除、さらには体制転換を戦争目的として掲げたが、いずれも達成された兆しはないとの見方が多い。

元国家情報会議の中東担当副責任者ジョナサン・パニコフ氏は「イラン指導部は攻撃を生き延びただけでも成功と見なしている」と指摘。「湾岸の海上輸送に対してどの程度影響力を行使できるかを学び、それを大きな代償なしに実行できると認識した」と述べた。

イランの核問題も依然として未解決で、高濃縮ウランは空爆後も地下に埋設されたままとみられ、回収・再処理によって兵器級に近づける可能性がある。さらに関係者らがロイターに明かしたところによると、イランの最高指導者はウランの国外移送を禁じる指示を出した。これが事態を一層複雑にしている。

ベトナムやアフガン戦争以上に深刻

戦争はイランの核兵器開発を抑制するどころか、北朝鮮のように抑止力として保有を急ぐ動機を強める可能性も指摘される。また、代理勢力への支援停止も実現していない。

さらに、より強硬とみられる新指導部の台頭で、周辺国に対する脅威は今後も続く見通しだ。欧州同盟国との関係悪化も進んでおり、中国やロシアは、米軍が直面する非対称戦術の弱点や武器供給の制約から教訓を得たとみられる。

ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン氏は、「ベトナム戦争やアフガニスタンからの撤退以上に、米国の地位に深刻な打撃を与える結果となりかねない」と指摘。「もはや現状復帰はなく、損害を覆す最終的な勝利も期待できない」との見方を示した。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象