これは自然な流れであって、アメリカでは今月からIEEPA(国際緊急経済権限法)関税の払い戻しが始まっている。最高裁で違憲判決が出たために、既に国庫に入った1660億ドルの税収をこれから金利もつけて輸入業者に返還しなければならない。そして代わりの財源は見通しが立っていない。そりゃあ金利が上がるのも無理はあるまいて。
アメリカ財政の問題は、これまで当欄でも何回取り上げたかわからない。そのうちかなりの部分は「債務上限問題」に絡めたものであった。つまり「×月×日になると米財務省の金庫がカラになりますよ!」てな話である。
幸いなことに、債務上限は去年7月に41.1兆ドルまで引き上げられている。直近の米国債発行残高は38.9兆ドルなので、まだしばらくは余裕がある。つまりイベントリスクとしての長期債務は、それほど心配しなくてよいことになる。
ところが「締め切り」がないだけに、今度は慢性的な財政悪化がテーマになる。つまり「インフレで金利上昇」→「利払い費の急増」→「減税や高齢化によるコストも増加」→「財政規律の喪失」→「さらなる金利上昇」とぐるぐる回って、市場心理を冷やすということになりそうだ。
もうちょっとだけ補足すると、今回の「ホルムズ海峡封鎖」のような地政学リスクにおいては、普通は「有事のドル買い」原則が発動されて、外国人が米国債を買ってくれて長期金利は自然と下がる(価格は上昇)のである。ところが今回のイラン戦争に伴う事態は、「戦費は日に日に増加」→「原油高でインフレも再燃」→「財政悪化で米国債増発」→「FRBも利下げはできない」てなサイクルが懸念される。いわゆる「悪い金利上昇」になってしまうのだ。
必然的に米国債の発行元であるスコット・ベッセント財務長官は、「こりゃたまらんわ」ということになる。今月のベッセント長官は訪日して、高市早苗首相や片山さつき財務相を表敬したかと思ったら、パリのG7会合で植田和男総裁をつかまえて会談に及んだりしている。
察するに、「君たち、わかっているよねえ」と言いたいのではないだろうか。いや、お気持ちはよくわかります。われわれだって正直、見ていて不安になっているのです。「金融正常化の遅れ」と「円安放置」と「財政拡張主義」の組み合わせですからねえ。
しかし何と言っても怖いのは、アメリカ連邦議会で共和党内に「造反ドミノ」が起きて、予算が成立しなくなることでありましょう。トランプ大統領の「憎しみと恐怖の政治」は、果たして世界をどこへ連れて行くのか?(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
