クロスピラミッドのステップに沿って考えると、まず「買い手」の分析から始まります。プロジェクトチームが取り組んだのは、「今、お客さんにどう思われているのか」を徹底的に知ることでした。リサーチの結果、ウイスキーになじみのない層の多くが「ウイスキーは独特のクセがあって飲みづらそう」という先入観を持っていることが判明します。実は「クリア」は、まさにその「クセ(燻製のようなスモーキーな香り)」を抑える製法でつくられていたのですが、その特徴がお客さんには十分に伝わっていなかったのです。
「飲みにくそう」の先入観を強みでどう覆したか
逆に言えば、ウイスキー特有の香りが苦手な人たちこそが、大きな潜在市場でした。そこでターゲットを「ウイスキー初心者」と定め、次のステップに進みます。売り手のステップである「商品特徴」を見直すと、「クリア」にはノンピート麦芽を使用し、スモーキーさを抑える製法という大きな強みがありました。これをお客さんにとってのメリットに変換すると、「飲みやすさ」となります。
つまり「役に立つこと」は、ウイスキー特有のクセを感じにくく、初心者でも飲みやすいこと。そしてそこから得られる「満足感」は、すっきりしていて、普段から気軽に楽しめるという点でした。こうして整理していくと、ブランドの進むべき道が自然に浮かび上がってきます。ウイスキー初心者の「飲みにくそう」というハードルに対し、「クリア」はクセがなく飲みやすいという「買いたくなるアイデア」を提示する。こうして、ブランド価値を「入門に最適な、飲み心地が軽やかなウイスキー」と定めたのです。
ウイスキーはほかにはない世界観をつくってきたお酒です。「なにも足さない。なにも引かない。」「人生おいしくなってきた」など、私も好きなCMのキャッチコピーがあります。多くの人が「ウイスキーは難しそうだけれど、いつか飲んでみたい」「CMのような大人の雰囲気を味わいたい」と思っていたことでしょう。

