ドイツの主要世論調査機関であるドイチュラントトレンドの調査によると、「メルツ首相が有権者とのつながりを築けていない」ことが、ドイツ国民の大多数(86%)が連立政権の政策に不満を抱いている理由の 一つと指摘している。
オラフ・ショルツ率いる社会民主党主導の連立政権(2021~25年)が予算案の財源をめぐる連立政権での内紛で崩壊し、その後をキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)主導でメルツ氏が政権を握る道が開かれた。長年低迷していたドイツの輸出主導型経済を急速に活性化させるという公約を掲げて政権に就いた彼にとっての問題は、有権者がその公約を実現できると信じていないことだ。
公約実現を信じていない有権者
ドイチュラントトレンドの調査によると、「メルツ氏が経済を立て直せる」と信じているドイツ人はわずか24%。メルツ氏が「効果的にコミュニケーションをとっている」と信じているのはわずか14%。連立政権が29年の次期連邦選挙まで続くべきだと考えているのはわずか44%に過ぎない。
メルツ氏は、トランプ政権がNATO(北大西洋条約機構)批判を繰り返す中、NATO擁護に徹した。結果、トランプ氏との関係は悪化したが、アメリカ軍最大の軍事拠点を置くドイツに対してトランプ氏は5000人のアメリカ兵削減を行うことでドイツに圧力を加えている。
イギリスとフランスは第2次世界大戦の戦勝国だが、ドイツは日本同様の敗戦国で立場が異なる。メルツ氏がNATOとヨーロッパを救ったと主張しても反応はいま一つだ。
ドイツの有権者が最も知りたい低迷する経済の回復について「われわれは今、繁栄を維持するための改革に向けて一歩ずつ進んでいる」とメルツ氏は述べ「もっと早く実現してほしかったのは認める。しかし、民主主義の発展には時間が掛かる」と述べた。
ただ、すでに手遅れと考える有権者の方が多い。それに独政治アナリストの中ではメルツ首相の政治的失敗の最大の受益者はAfDだと指摘する。同党は世論調査でメルツ首相の保守連合を明らかに上回っている。
メルツ氏は、中道左派の連立パートナーである社会民主党(SPD)との難しい改革について合意しようと苦心する中で忍耐を求めている一方、AfDはとくに旧東ドイツという地盤で多くの有権者の共感を呼びやすい単純な解決策を提示している。モスクワとの関係修復、安価なロシア産ガスの供給再開、移民の強制送還であり、これは説得力を持つ。
メルツ氏と彼の連立政権が受ける政治圧力は、26年9月に予定されている東部2州の選挙を前に、さらに強まる可能性が高い。現在の世論調査に基づくと、これらの州ではAfDが勢いを増しており、同党の歴史的な勝利が予想される。仮に同地域で主流保守派が大敗すれば、メルツ氏は政治的な責任を負うことになる。
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【3カ国首脳のレームダック化】
