就任から9年、2期目も残すところ1年を切ったマクロン氏は、過半数割れの与党を率い、予算編成もままならない状況の中、外交でも自身が進めるヨーロッパ独自の安全保障体制の確立は難航している。
イラン紛争では、アメリカのトランプ政権と距離を置く外交を進めているが、トランプ氏への強硬発言により米仏間では摩擦が絶えない。イラン攻撃以来、アメリカに非協力的なイギリスのキア・スターマー労働党政権やスペインのサンチェス左派政権に近寄っていることが、トランプ氏の怒りを増幅させている。
そもそも、マクロン氏は就任初期に富裕税(ISF)を縮小させ、そして1期目の就任2年目には国内で反政府運動の黄色いベスト運動が起きて以来「金持ち寄りの政策」と非難されてきた。今でもそれは変わっていない。定年年齢を62歳から64歳に引き上げた年金改革の断行により不人気を囲い、左派からは「新自由主義的」と批判され、右派からは「移民政策が甘すぎる」と批判され、EU寄りの外交政策さえも疑問視されている。
フランスで超エリートの学歴を持ち、元投資銀行幹部で官僚エリート出身という経歴は、当初の期待に反し貧富の差を生む傲慢な政治家という烙印を押されている。中道は今ではどちら付かずの不人気で、逆に極右、極左を勢いづかせており、来年春の大統領選で極右の大統領誕生も噂され、マクロン氏への風当たりは強まる一方だ。
スターマー降ろしが止まらない労働党政権の混乱
イギリスのスターマー首相は、26年5月7日の地方選挙での大敗以来、政権再建をかけた演説も失敗に終わり、403人の議員のうち90人以上が辞任を求め、4人の副大臣が辞任した。シャバナ・マフムード内務相は、辞任の時期を設定するよう個人的に促したが、スターマー氏は依然として首相官邸に居座り続けており、今のところ正式な党首選に直面することはない。
5月7日の地方選挙で労働党は、イングランドで約1400以上の議席を失った。一方、右派ポピュリズム政党である「リフォームUK」は歴史的に保守党と労働党が優勢だった地域の主動権を握った。だが実際に、スターマー氏を辞任させようという動きは進んでいない。党内の主要議員の派閥が分裂しており、かつスターマー氏に代わる強力な勢力が存在しないためだ。
それにイギリス特有の事情もある。最近、アメリカを国賓として訪問した国王チャールズ3世にとっては、首相が辞任すればイギリスの面子がつぶれるという事態を避けたいという事情も抱える。「国王を愚弄することはできない」という政府関係者の意見さえある。
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【スターマー政権の不出来さに国王も心配】
