週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
ビジネス

"ミュトスの衝撃"を冷静に見るべき理由、騒動の影で進むサイバー攻撃の「大衆化」《4つの変化と基本対策の価値》

10分で読める
オンライン会議をするビジネスパーソン
ビデオ会議に映る幹部はAIで生成された偽物で約38億円を送金してしまった…(写真: Fast&Slow / PIXTA)
  • 吉川 孝志 三井物産セキュアディレクション フェロー/上級マルウェア解析技術者
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

攻撃側にとって、AIは雑に扱っても成果につながる。だが、防御側はそうはいかない。あるセキュリティベンダーの実務検証では、マルウェアの解析に半日かかる作業を30分でこなしたが、マルウェアかどうかの判定が会話中に3回変わったケースもあった。

速いことが正確とは限らない。攻撃側は「1つ当たれば成果」、防御側は「1つの見逃し」が致命傷になり得る。

AI時代こそ「基本対策」の価値が高まる

その一方で忘れてはならないのは、まず先の55カ国のファイアウォール侵害で、攻撃者は脆弱なターゲットだけを狙い、防御が固い相手への攻撃は早々に諦めていたという事実だ。侵害されたのは、基本対策が抜け落ちた機器だった。

AI時代に必要なのは、防御側にAIを取り込むといった新しい技術の導入だけではない。その前に、資産把握、公開機器の管理、強固な認証、迅速なパッチ適用、ログ監視。地道だが、これらの基本を固めることが、今の攻撃に対しては最も確実な防御になる。

また、埋もれていた弱点をAIが次々と掘り起こすことで、修正プログラムの公開は今後一気に増える見通しだが、それに対応し続ける体制も基本の一部だ。AIによってもたらされるこれからの変化に追従し続ける運用の設計がものを言う。

もっとも、この「基本対策で防ぎやすい」状況が、いつまでも続くとも限らない。AIの性能もそれを動かす仕組みも世代を追うごとに進化しており、攻撃側の能力は着実に伸びている。

今の変化を見ていると、攻撃が文字どおり高度化する日も遠くはないだろう。だが、それを恐れるより先に、足元を固めること。繰り返しになるが、基本対策が自社で確実に効いているか、その点検こそが、AI時代におけるセキュリティ対策の出発点になる。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象