今後、外部の弁護士らによる調査委員会を立ち上げていくという。東洋経済では2022年11月に大清水友明こと、ジャーナリストの竹中明洋氏の取材によって本件を詳細に報じている(仕様を無断変更か、日本電産が抱える新たな問題 空調機器用モーター子会社に無理な収益要求)。
製品の性能・安全性にも関わる重大な問題だが、日経新聞をはじめ当時この問題を報じたメディアはほとんどなかった。以下、当時の記事の内容を再配信する。
なお、筆者が入手した内部文書には「巻線はモータのステータの中に使用するコアな部品であり、材料の変更により、モータの特性も悪化する。伸び率が変わり断線率が高いので巻線的に断線が多くなり、切れかかりのものが流出するリスクがあがると考えている」と記されている。出荷された最終製品への影響を含め詳細な検証が必要になりそうだ。(2026年5月13日記)
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この問題もまた、異常に高い目標設定と行き過ぎたプレッシャーが招いた結果だろうか。
日本電産の100%子会社「日本電産テクノモータ」(以下、テクノモータ社)で、顧客と取り決めた仕様を無断で変更していたことが明らかになった。すでに一部報道で伝えられていたこの問題を筆者が取材したところ、日本電産の体質を象徴的に表すものだったことが浮かび上がった。
問題が発覚したのは、2022年6月。テクノモータ社の中国法人である日本電産芝浦(浙江)有限公司で、空調機器用のファンモーターの「巻線」と呼ばれる部品の素材に、顧客に仕様書で示したポリウレタン銅線ではなく、アルミ線を銅でコーティングした銅クラッドアルミ線に変更しているとの内部告発があったのだ。
納入先はダイキン工業や三菱電機、日立ジョンソンコントロールズ空調など4社で、無断で行われていたという。
現場の声を幹部が押し切る
事情を知るテクノモータ関係者はこう明かす。
「来年夏発売の新モデルに向けて顧客に売り込むネタとして、テクノモータ社の開発部門が検討していたのが銅クラッドアルミ線を使った巻線です。今まで使っている銅100%のポリウレタン銅線の巻線よりもコストを抑えることができるのが売りでしたが、それを聞いた幹部が 『すぐに使え』と言い出しました」
ただ、上記のとおり、顧客に示した仕様書ではポリウレタン銅線を使うことになっている。無断で仕様変更することに、現場からはさすがに問題視する声が上がったが、それでもテクノモータ幹部が押し切ったという。
「時期的には(3月の)決算の締めを控え、テクノモータ社は日本電産本社からの厳しいプレッシャーで原価を抑えて収益を上げる必要に迫られていた。その後もコストが安いからと、ずるずると銅クラッドアルミ線を使ったモーターの生産が続いてしまった」(テクノモータ社関係者)
一般に、ポリウレタン銅線が銅100%からなるのに対して、銅クラッドアルミ線はアルミが60%、銅が40%程度になる。巻線は、モーター内部のローターが回転するための力を発生させる「ステーター」と呼ばれる部分の核となる部品だ。材料を変えることで安全性などのリスクはないのだろうか。
「時限爆弾をしかけているようなもの」
東海大学元教授でモリモトラボを主宰する森本雅之氏は、「巻線を巻きつける際に、アルミはやわらかいので銅を1とするとアルミは1.7くらい伸びる。そうすると、巻線を覆うエナメルが剥がれやすくなり、そこに水分が入れば、温度変化のたびに収縮、膨張してしまう。使い始めてから3年や5年しないと出てこないが、時限爆弾をしかけているようなものだ 。しかも、アルミを使うと抵抗が大きくて電流が流れにくくなるから、たくさん電流を流さないといけない。結果としてモーターの性能が落ちやすく、温度も高くなる」と指摘する。
内部告発を受け、日本電産では告発者からのヒアリングまでしておきながら、仕様変更による生産は続き、夏を過ぎた頃にようやく生産のストップと顧客への説明を行う方針が決まったという。
仕様が変更されたモーターをテクノモータ社から購入した顧客に取材したところ、ダイキン工業は、「当社から日本電産テクノモータ社に確認をしたところ、『空調モーターの一部の部品について、契約上の仕様とは異なる素材を採用し出荷していた』との報告がありました。同社の検査データを添え『素材は変わったが、契約で定められた性能基準を満たしている』との説明を受けました」と回答した。
ダイキン工業では、至急検査を実施して評価を行うことにしており、「検査の結果、問題があった場合には適切に対応いたします」としている。
また、品質不正問題に揺れる三菱電機は「回答を差し控える」とし、日立ジョンソンコントロールズ空調は期日までに回答はなかった。
テクノモータ社会長は日本電産トップでもある永守重信氏。社長にはシャープ出身の廣部俊彦氏が就く。かつてシャープの社長だった片山幹雄氏が、永守会長の後継者含みで日本電産に招かれた際に、ほかの幹部とともに引き連れてきた。その後、片山氏が日本電産を追われた後も日本電産グループに在籍し続けているが 、業績目標を達成するよう本体から厳しいプレッシャーにさらされ続けているという。
9月に社長を退任した日産出身の関潤氏は、異様に高い業績目標と行き過ぎたプレッシャーが不正に繋がりかねないとして、永守氏に対して見直しを求めた。ところが永守氏はこれに激怒し、関氏が会社を追い出されるに至った顛末は、これまでの記事で述べてきたとおりだ。行き過ぎたプレッシャーをかけ続ける経営手法が限界に達しつつあることは、今回の仕様変更の問題からも明らかではないだろうか。
なお、テクノモータ社における空調機器用モーターの仕様変更の問題について、同社総務部並びに日本電産本社の広報宣伝部に東洋経済編集部より質問をしたところ、期限までに回答はなかった。

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