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高市政権肝いり「インテリジェンス強化」に4つの"落とし穴"、国内の監視社会化を促すリスクも

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政府の「インテリジェンス(情報収集・分析)能力」強化に潜むリスクとは?(画像:tadamichi/ PIXTA)
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国家にとっては、仮想敵国の軍事力、主要国の外交方針、テロの兆候などが典型的な対象となる。
企業にとっても、地政学リスクの発生可能性や影響度などは重要なインテリジェンスであり、国・企業を問わず、意思決定の質を左右する基盤となる。

国際秩序は益々混迷を深めている。イラン戦争の勃発、アメリカの政策運営の不確実性、中国・ロシアといった専制主義国の影響力拡大――民主主義陣営は後退し、日本の国力も相対的に低下し続けている。

激動の国際情勢の下で、日本はどの方向を目指すのか、どの政策を選択すべきか。その判断のためには、質の高いインテリジェンスは不可欠である。強化の必要性自体は疑いようがない。

ただし、必要性が高いからといって、強化が容易に実現するわけではない。むしろ、日本が直面する構造的な課題を踏まえれば、慎重な制度設計と取り組みが不可欠である。

以下、日本のインテリジェンス機能強化について、特に注意すべき4つの落とし穴を指摘したい。

① 対外インテリジェンス強化の難しさ
② 対内偏重リスク
③ 牽制機能の欠如
④ インテリジェンスと相性の悪い日本社会の文化的特性

国外での情報収集に「2つの構造的課題」

そもそも、インテリジェンスには「対外」と「対内」がある。
イギリスのMI6やアメリカのCIAは対外、MI5とFBIは対内を担当する。

政府が掲げる「国際情勢の流動化への対応」を本気で進めるなら、焦点となるのは、主に安全保障、外交・軍事の視点での国際関係に係わる対外インテリジェンスである。

しかし、対外インテリジェンスの強化は簡単ではない
日本には2つのレベルで構造的な課題がある。

ⅰ 軍事的制約
イギリスのMI5やMI6の「MI」が「Military Intelligence」の略であることからもわかるように、国のインテリジェンスは軍事活動と密接に結び付いている。
専守防衛を掲げる日本は活動範囲が限定的で、広域かつ高度な情報網の構築などが難しい。
ⅱ インテリジェンス・エコシステムの欠如
インテリジェンス先進国の米英では、外交問題評議会(CFR)や王立国際問題研究所(チャタムハウス)をはじめとする多数の民間シンクタンクが、国家戦略を支える知的インフラとして機能している。
政権交代に伴う人材移動も活発で、政府・民間・学術が知見と経験、ノウハウを共有・蓄積するエコシステムが確立している。
日本にはこうした「インテリジェンスのエコシステム」が存在せず、組織・専門家の層が薄い。

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【日本が「監視社会」化するリスクも】

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