この性格は、語彙問題にもよく表れています。たとえば2014年には、orderという単語の意味を文脈から考えさせる問題が出ました。orderは「注文」「命令」「順番」など、受験生なら誰でも知っている単語です。
ところが東大は、単に「意味を答えよ」とは聞いてきません。文中のorderと同じ意味で使われているものを複数の英文から選ばせることで、単語の丸暗記ではなく、その意味の広がりを理解しているかを問うのです。
たとえばalphabetical orderなら「アルファベット順」。ここでは「順番」という基本義がわかっていれば対応できます。さらに「her room is in good order」のような表現になれば、そこから「整然としている」「整頓されている」という意味が導ける。
東大が見ているのは、難単語の知識量ではありません。すでに知っているはずの単語を、文脈の中でどこまで柔軟に使いこなせるかです。言い換えれば、知識そのものではなく、知識の運用力を問う試験なのです。
京大英語は1題ごとの負荷が重い
これに対して京大英語は、まったく別の方向から受験生に迫ります。試験時間は同じ120分でも、構成は例年大問4題程度。東大のような「盛りだくさん型」ではなく、1題ごとの負荷が重く、記述中心です。問題数は少ないのに、終わった後にはどっと疲れる――京大英語の感触を言葉にするなら、まさにそんな試験でしょう。
京大英語では、一つの語、一つの表現に対して、すぐに答えを出さず立ち止まって考える力が求められます。語彙、文構造、文脈理解、さらには背景知識まで含めて、その英文が何を言おうとしているのかを深く読み取らなければならない。受験生に「考えさせる」こと自体が、京大英語の設計思想に組み込まれているのです。
その典型として挙げられるのが、2022年度の長文に出てきたblandlyという語です。
Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that there are only a handful of comparable examples in earth’s history...
このblandlyを見て、即座に意味を答えられる受験生は多くないでしょう。単語帳で頻出というわけでもなく、見慣れない人の方が普通です。ですが、京大英語では「知らないから終わり」とはなりません。むしろ、そこから先をどう考えるかが問われます。
この一節の前には、大気や海の温暖化、海洋の酸性化、海面上昇、氷河の後退、砂漠化、富栄養化といった深刻な現象が、人類の「成功」の副産物として列挙されています。つまり筆者は、地球史的にもまれなほど重大な変化が起きているのに、それをただglobal changeという無難な言い方で済ませてしまってよいのか、という違和感を示しているわけです。
そう考えればblandlyには、単なる「穏やかに」ではなく、「深刻さをぼかすように」「ことさら当たり障りなく」といった否定的なニュアンスがあると読めてきます。
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【京大英語は…】
