小中高生の自殺者増加の背景は、現時点では十分に解明されていない。黄川田仁志・こども政策担当大臣は4月30日の記者会見で、「子どもの命と安全を守るプロジェクト」を立ち上げ、「こどもや若者の自殺を防ぐための戦略」を表明した。
また同日、NPO法人OVAによる25年度の「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」が公表された。この1つは、8自治体から受託して実施したインターネット相談の相談者のうち、相談開始時に18歳以下で、同意が得られた人を対象にした調査だ。
それによると、自殺行動、自殺の具体化、切迫した心理的苦痛、自己破壊的行動は自殺企図や自殺のほのめかしを行う可能性が高い「高リスク相談者」に多く、その可能性が低い「低・中リスク相談者」の2〜9倍出現しやすかった。
家族関連要因も「高リスク相談者」に多く、「低・中リスク相談者」の2〜3倍出現しやすいことが示された。一方で、学校問題は「低・中リスク相談者」のほうが出現しやすかった。
では個別の事例を通じて、自殺に至る背景や経緯を見ていこう。
自宅マンションから飛び降りたサオリ
サオリ(仮名、20代)は高校1年のとき、自分で児童相談所(児相)に電話をして、一時保護されたという。
父親には「殺すぞ!」と言われ、学校へ逃げた。すると学校が児相に通報し、数カ月保護されたのだ。筆者がサオリに会ったのは、新宿・歌舞伎町の映画館「TOHOシネマズ」西側にある「シネシティ広場」、通称「トー横」と呼ばれる場所だ。
サオリは幼い頃より父親から身体的虐待を受けていた。しかし、母親や祖母は、守ることができないでいた。
「いつからか?小学校ぐらいかな? いや。記憶が曖昧だけど、もう多分その前から。幼稚園とかもしれない。その頃、あざだらけだったような気もする。サオリは父親が子どもを殴る人という愚痴を親戚中に言っていたので、周囲は知っていたと思う。でも、親戚には『何もできへん』と言われていた。殴られても、母親も祖母も見ているだけ」
高校受験のときのこんなエピソードも教えてくれた。
「スマホは取られた。だからストレス解消で楽器をいじっていた。クリスマスに買ってもらったギター。最初は『カントリーロード』を弾こうと思って練習していたが、なかなかできない。弦を押さえる力が足りなくて、十分な音が出なかった。それを父親に見つかり、ギターを壊された。『勉強しろ』と言われ、殴られた。ギターは自分の部屋にボロボロになったままになっている。捨てられなくて……」
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【10代や20代前半が歌舞伎町で心中、自殺…】
