そう、ノスタルジーが蘇らせるのは、自分が若さにあふれ、元気いっぱいで、毎日がドラマチックだったという記憶だ。60代にとって、それは失われてしまった人生の黄金期、ベストシーズンでもあるだろう。
たとえお金があっても、当時のような若さや体力を取り戻すことはできない。ただ、その記憶を追体験することはできる。
往年の名バイクや80年代の歌手たち
オートバイの世界で今、70~80年代の名車のオマージュモデルが売れているという。コミックで人気に火がついたカワサキ「Z2」やホンダ「CB750F」などの大型バイクは、当時の青少年たちの憧れだった。「バイクに乗っている男の子は不良っぽくてカッコいい」というモテアイコンでもあっただろう。
とはいえ、クルマと違ってバイクを乗りこなすには、一定の体力と集中力が必要になる。いくら憧れがあっても、30年以上も前のオリジナル車両となると、メカも旧式でコンディションの維持が難しい。
そこで、バイクメーカーは往年のスタイルを受け継ぎつつも、中身は最新技術で性能を高めた新型モデルを売り出した。操作性がよく、安全で、「昔は若かった」世代のライダーでも乗りやすい。懐かしさをかきたてるバイクにお金を払うのは、若く夢にあふれていた自分に戻りたいから――という思いもあるのではないか。
同じことはエンタメにも言える。よく開催されているのが80年代に活躍したJ-POPの歌い手たちのコンサートだ。杏里、八神純子、杉山清貴、稲垣潤一……そんな顔ぶれに思わず甘酸っぱさがこみ上げてくる人は多いだろう。往年のヒット曲を目当てに、客は集まってくる。「あの頃の自分」に戻るために。
良き時代に戻るための「タイムマシーン」が買えるなら、それにお金を払うのは不思議な行為ではない。
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【ノスタルジー・ビジネスの魅力】
