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今は「すべての投資」をやめるとき、2026年は「投資は死んだ」と言われる「歴史的な年」になる

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なぜ筆者は「今は投資をやめたほうがいい」と主張するのだろうか(写真:ブルームバーグ)
  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
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株と債券が正の相関を持ってしまったから、資金はオルタナティブとの分散投資を狙ったが、これも正の相関に変わってしまった。株が上がりすぎたら次は不動産。不動産が上がりすぎたら、資源というのが、リーマンショック前のリスク資産市場だった。結局、すべてのリスク資産が正の相関を持つようになってしまった。

これは、株式市場の中でのセクターローテーションが、範囲を広げて、すべての投資可能資産に行き渡ってしまった(汚染が拡大した)ということである。CTA(商品投資顧問)のセクターローテーションがその典型だが、すべての投資家がそれをフォローするようになってしまったのである。これが、バブルを次々に隣接の資産市場に広げていったのであり、バブルの伝染となったのである。

こうなると、まともな分散投資は不可能になってしまう。株式における地域分散(米国株、欧州株、アジア株といったもの)が機能しなくなったのは有名だが、それはすべてのリスク資産に対して起こっていたのである。
このような異常事態になったのは、トランプ大統領のせいだろうか?それともイラン戦争のせいだろうか?

そうではない。前述のように、これは21世紀を通して起きていることなのである。では、根本原因は何か。それは、世界中の投資家が「機関投資家化」してしまったからである。

普通は、個人投資家がノイズであり、非合理的であり、ノイズトレーダーが資産市場をおかしくする、と思われているが、まったく逆なのである。機関投資家の影響力が圧倒的になったために、彼らと同じように投資行動をとらなければ、負けてしまうようになったのである。

負けないためには、同じようにプロとして行動する。つまり、マネをして、同じ投資行動をとるしかない。機関投資家は世界中に投資する。すべての資産を貪欲にサーチする。チャンスを漁る。となると、彼ら機関投資家の投資センチメントがすべてのリスク資産の評価に影響する。

つまり、彼らがリスクオンとなれば、すべての資産価格は上昇し、リスクオフとなれば、すべての資産価格は下がるのである。連動の理由は、リスク資産の側に問題があったのではなく、同じ投資家がすべての資産に投資していたから、投資する側にあったのである。これは、トランプ大統領がいようがいまいが、変わらない。だから、強まりこそすれ、なくなることはないのである。

”Cash is King”も、インフレという恐怖には勝てない

となれば、最後の、もう一つの伝統の最も古い知恵に頼るしかない。もっと古い知恵とは?

それは、”Cash is King”という格言である。キャッシュポジションを増やしておく。休むも投資、という言葉もある。リスクから逃げる。リターンはあきらめて、すべて換金して現金にしておく。これしかない。

しかし、現在、これを積極的に行う投資家はいない。なぜなら、持たざるリスク「FOMO」(Fear of Missing Out)という、取り残されることへの恐れが、多くの投資家の投資する理由だからである。

つまり、周囲の投資家が利益を得ている中で「自分だけがチャンスを逃しているのではないか」と強い不安を感じる心理状態にあるということだ。馬鹿馬鹿しいが、これが現実だ。この傾向を強く促す根本的な理由が、実は、現在起きている。それは、われわれ日本人がいちばん強く感じているかもしれない。すなわち、「インフレという恐怖」である。

現金を持っていては、ほかの投資家に負けてしまうどころか、純粋に貧しくなってしまう。どんどん、資産が目減り、消えていくのである。これは怖い。消えていってしまうのを放置するぐらいなら、リスクがあったっていい。ともかく、何でもいいから投資しないと、ということで、日本の35年ぶりの投資大ブームになっているのである。

実は、インフレというものこそ、投資にとっての最大の敵なのである。1970年代に「株は死んだ」と言われるぐらい、株式投資の時代は永遠に終わった、と思われた。それは、インフレだったからなのだ。どんなに株式が値上がりしても、インフレはそれをさらに上回る。現金もあり得ない。債券もインフレを上回る利子は稼げない。企業の事業も収益増加はインフレに追い付かない。全員負け、という状況なのである。投資の最大の敵はインフレなのだ。

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【現金もまともな投資もインフレに勝てないはずだが……】

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