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「日本鬼子」と日台にルーツを持つ兵士を侮辱した台湾軍幹部を処分/「文民統制」で軍幹部の処分を素早く進めた台湾

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台湾・国軍の儀仗隊。台湾の軍隊はかつての中国国民党の軍隊をルーツに持つ(写真:シェキー/PIXTA)
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疑惑の拡大とともに、社会の関心は急速に高まり、抗議活動へと発展していく。インターネット上の呼びかけをきっかけに結成された「公民1985行動連盟」が中心となり、13年8月3日には総統府前に約25万人が集結した。参加者は白いTシャツを着用し、「真相の解明」や「軍の不透明性の是正」を訴えたのだった。

この一連の動きは、政治や司法制度にも大きな影響を与えたといわれている。

「文民」国防相が重きを置いていること

まず、平時における軍事裁判制度が見直された。それまで軍人の犯罪は軍内部の軍事法廷で裁かれていたが、「軍事審判法」の改正により、平時の犯罪については一般の司法機関が捜査と審理を担う体制へと変更された。これにより、軍内部での処理による不透明性を抑制し、司法の公正性を高める狙いがあった。

最終的に、洪仲丘さんが所属していた部隊の将校や、陸軍司令部を含む上層部に対して処分が下された。 何江忠・副旅団長は職権を乱用し、本来不要とされる監禁を強行した責任を問われ、懲役1年6カ月の判決が確定した。

徐信正・大隊長は、洪さんを禁閉室へ送る手続きを主導したとして、同じく懲役1年6カ月とされた。范佐憲一等軍曹はいじめ行為に関与し、監禁処分を上官に働きかけた中心人物の一人と認定され、懲役1年2カ月の判決を受けている。 一方で、直接的に過酷な訓練を課した陳毅勳下士官については、当初「殺人罪」の適用も検討されたものの、最終的には過失致死と認定された。

また刑事責任とは別に、軍内部では大規模な行政処分が実施された。事件の重大性を踏まえ、当時の馬英九総統が遺族および社会に対して謝罪し、高華柱・国防相が引責辞任するなど、政治的責任も問われる結果となった。

今回の事件で、問題となった中隊長を司法機関に送致する方針が示された背景にも、こうした制度改革が影響していると考えられる。もし改革が行われていなければ、軍内部で処理される可能性もあった。

なお、現在の国防部長である顧立雄氏は、当時、洪仲丘事件の弁護団の一員として関わっていた。文民出身として国防トップに就く彼が、安全保障への対応と同時に人権や民主的統制を重視する姿勢を示している背景には、この事件の経験が影響しているとみられる。

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