たたき台がなければ、議論を始めることも、具体的なフィードバックをすることもできません。完成品に対してアレコレ指摘するのは簡単でも、ゼロからイチを生み出す作業こそが最も大変で、尊い仕事です。この認識が職場に広まることで、たたき台を作った人が正当に評価されるようになります。
たたき台を作る人が評価されるべき理由は、精神論ではありません。たたき台がない状態では、ビジネスの現場に具体的な問題が生じます。
口頭だけで意見を言い合ったり、抽象的な議論になったりしやすいのが、たたき台がない状態の典型です。いわゆる「空中戦」と呼ばれる議論で、論点がズレたり、意図が伝わらなかったりします。
たたき台があると、構図が変わる
さらに厄介なのが、人間関係の問題です。ある議題について議論するはずなのに、当人同士にそのつもりがなくても、AさんとBさんがあたかも対立しているように見えてしまいます。口頭のみで具体的なものがない状態では、コミュニケーションの難易度が上がり、いつの間にかAさん対Bさんの構図になってしまうのです。
一方、たたき台があると、この構図が大きく変わります。
(出所:『たたき台の教科書』)
Aさん対Bさんではなく、「参加者対たたき台」という構図になるのです。たたき台という具体的なものが目の前にあることで、論点がズレにくく、議論が具体的になり、進みやすくなります。そしてその後のアクションも明確になります。
「このたたき台のここが違う」という議論になるため、「あの人の意見がダメ」という人間関係の対立には発展しにくくなります。無用な対立を防ぎ、議論が前に進む——これがたたき台の持つ、大きな効果です。
この構図の変化はビジネス上の実利にも直結します。意思決定や合意形成が早くなり、完成までの手戻りが減り、実行リスクの早期発見にもつながります。これらの具体的なメカニズムについては、『たたき台の教科書』で詳しく解説しています。
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【たたき台作りで積み重なるスキルとキャリア】
